政治・経済

『数字のトリックに騙されるな。GDPとGNIの決定的違い』

taka

場所か、人か。所得の定義

経済ニュースで連呼されるGDP。日本語では国内総生産と訳されるが、実はこの数字、厳密には「日本国民全体の所得」とはイコールではない。なぜなら、GDPはあくまで「場所」に基づく指標であり、そこには「誰が稼いだか」という視点が欠けているからである。 GDPは、日本国内で生み出された付加価値の合計である。したがって、外国人が日本で働いて得た給料や、日本企業が外国人投資家に支払った配当金も、日本のGDPには含まれる。しかし、そのお金は日本国民の財布には入らず、海外へ流出していく。 逆に、日本人が海外で働いて得た給料や、皆さんが保有する外国株から得た配当金は、日本のGDPにはカウントされない。だが、これらは間違いなく日本国民の所得の一部である。 この「国境を越えたお金のやり取り」、すなわち経常収支における第一次所得収支や第二次所得収支を加味し、国民ベースで再計算した指標。それこそが国民総所得、英語でGNI(Gross National Income)と呼ばれるものである。

拡大するGDPとGNIの乖離

経済のグローバル化が進む現代において、この二つの指標の差は無視できないものとなっている。 GNIは、GDPに海外からの純所得を加えることで算出される。所得収支がマイナスの国ではGNIはGDPより小さくなるが、日本の場合は逆である。日本は巨額の対外純資産を持つ世界最大の債権国であり、海外からの利子や配当収入が莫大であるため、必然的にGDPよりもGNIの方が大きくなる構造にある。 グラフを見ればその傾向は明らかである。一九九五年を境にGNIがGDPを上回り、以降、その乖離幅は年々広がり続けている。これは日本企業が海外進出を加速させ、投資収益を積み上げてきた成果といえる。しかし同時に、国内での生産活動、すなわちGDPがデフレによって成長せず、長く停滞していたことの裏返しでもあるといえるだろう。

「GNI重視論」という逃げ口上

昨今、国内経済の伸び悩みを受け、奇妙な主張を耳にすることがある。「これからは国内生産(GDP)ではなく、海外での稼ぎを含めたGNIを重視すべきだ」という論調である。「国内が成長しなくても、海外で稼いでいるから日本は豊かなのだ」と言いたいのだろう。 しかし、この耳障りの良い言葉には警戒が必要である。GNIが増加すること自体は歓迎すべきだが、それを理由にGDPの停滞を正当化してはならない。なぜなら、GNIを押し上げている海外からの配当金や利子は、海外資産を持つ一部の大企業や投資家には恩恵をもたらすが、そんな資産を持たない大多数の国民には無関係な話だからである。 一般的な勤労者が依存しているのは、あくまで国内での雇用と賃金、つまりGDPの成長である。デフレ放置による国内経済の低迷から目を逸らさせるために、殊更にGNIを持ち出す議論には注意が必要である。数字のマジックに惑わされず、私たちの足元の暮らしが豊かになっているか、その一点を見極める視点が不可欠である。

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TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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