「もっとやってよ!」と言い続けると、あなたのパートナーは壊れます。
パートナーに対して、「なんで察してくれないの?」「もっと家事をやってよ」と、イライラをぶつけてしまうことはありませんか?
一緒に生活していれば、相手に何かを求め、要望を伝えることは必要です。 しかし、もしあなたが「相手との関係を良くする努力」をせず、ただ一方的に「要求」ばかりしているとしたら……それは非常に危険なサインです。
『7つの習慣』の著者スティーブン・R・コヴィーは、そのような状態をイソップ童話になぞらえて、**「黄金の卵を欲しがるあまり、ガチョウを弱らせている状態」**だと警告しています。
私は理学療法士として、身体のメンテナンスを怠って酷使し続けた結果、再起不能になってしまったアスリートを何人も見てきました。これは夫婦関係でも全く同じことが言えます。
この記事では、目先の利益(黄金の卵)にとらわれて、一番大切な資産(ガチョウ)を殺さないための思考法を解説します。 結論を言えば、**「要求する前に、まず相手を労る(メンテナンスする)」**ことだけが、愛と豊かさを長続きさせる秘訣なのです。
「黄金の卵」と「ガチョウ」の話
まずは、有名なイソップ童話を思い出してみましょう。
ある農夫が飼っているガチョウが、毎日一個ずつ「黄金の卵」を産むようになりました。農夫は大金持ちになりましたが、次第に欲深くなり、「一日一個なんて待てない!お腹の中に卵がたくさんあるはずだ」と考えてガチョウを殺し、お腹を裂いてしまいます。 しかし、中には卵などなく、農夫は黄金の卵も、それを産むガチョウも両方失ってしまいました。
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夫婦関係における「卵」とは?
これを夫婦関係に置き換えてみましょう。
- 黄金の卵(成果・Result): 相手にしてほしいこと。家事、育児、稼ぎ、マッサージ、優しい言葉など。
- ガチョウ(資産・Asset): それをしてくれるパートナー自身、および二人の信頼関係。
コヴィー博士の指摘はこうです。
夫婦がお互いの関係を維持するための努力(ガチョウの世話)はせず、相手にしてほしいこと(黄金の卵)ばかりを要求していたら、相手を思いやる気持ちはなくなり、深い人間関係に不可欠なさりげない親切や気配りをおろそかにすることになるだろう。
相手を「便利な道具」扱いしていませんか?
「卵(結果)」ばかり求める人は、無意識のうちに相手を操ろうとします。
- 「もっと稼いできてよ(卵を産め)」
- 「部屋を片付けてよ(卵を産め)」
- 「私の機嫌をとってよ(卵を産め)」
こうして相手を「自分のニーズを満たすための道具」として扱い、日々の感謝や気配り(エサやりや掃除)をサボれば、当然ガチョウは弱っていきます。 やがて愛情は枯れ果て、ガチョウが倒れた(離婚や関係破綻)とき、もう二度と黄金の卵は手に入らなくなるのです。
リハビリ視点:メンテナンスなしで機能は続かない
理学療法士の視点から言わせていただくと、人間の体も人間関係も**「メンテナンス(維持管理)」**なしには機能しません。
どんなに高性能な車でも、オイル交換をせずに走り続ければエンジンが焼き付きます。 夫婦関係におけるオイル交換とは、「おはよう」の挨拶であり、「ありがとう」の感謝であり、相手の話を聴く時間です。
- P(Production): 成果(卵)。何かをしてもらうこと。
- PC(Production Capability): 成果を生み出す能力(ガチョウ)。相手の心身の健康や信頼関係。
この「P(成果)」と「PC(能力)」のバランスが崩れたとき、関係は終わります。 長続きする夫婦は、相手に何かを頼む(P)以上に、相手を大切にする(PC)ことに時間を使っているのです。
まとめ・アクションプラン
今回の記事の要点をまとめます。
- 相手への要求(黄金の卵)ばかりで、関係維持の努力(ガチョウの世話)を怠ると、愛は枯渇する。
- パートナーを操ろうとしたり、あら探しをしたりするのは、ガチョウを殺す行為である。
- 長く幸せな関係を保つ秘訣は、成果(P)と能力(PC)のバランスを保つことにある。
Next Action:今日は「要求」を封印しよう
関係修復のための第一歩として、今日一日は**「相手への要求を一切やめ、メンテナンスに徹する日」**にしてみませんか?
- 「あれやって」と言いたいところをグッとこらえて、「いつもありがとう」と言ってみる。
- 相手の好きな飲み物を用意する。
- マッサージをしてあげる。
これらは全て、ガチョウへの「エサやり」です。 ガチョウが元気になれば、自然とまた素晴らしい黄金の卵を産んでくれるようになります。焦らず、まずはエサをあげることから始めましょう。
この「P/PCバランス」の概念は、夫婦関係だけでなく、子育てやビジネスにおいても極めて重要です。人生のあらゆる場面で適用できるこの法則を詳しく学びたい方は、**『7つの習慣』**をぜひ読んでみてください。
