「善い行い」には二つある──アドラー心理学が教える本当の貢献とは
「向上したい」という思いがもたらす二つの方向
誰しも「より良くなりたい」「理想の自分に近づきたい」という気持ちを持っています。
この気持ちは、人を前進させる大切なエネルギーです。
しかし、アドラー心理学はここで重要な指摘をします。
その「向上心」が必ずしも建設的に働くとは限らないということです。
- 建設的な方向:人や社会に役立ち、成長や貢献につながる
- 非建設的な方向:他者を見下したり、自慢するためだけの行動にとどまる
つまり、同じ「向上したい」という目的でも、そこにどんな意図があるかで人生の質は大きく変わってしまうのです。
「善い行い」には二つの意味がある
「善いことをしたい」という願望も、まさにこの二面性を持っています。
- 本当に人のためになる善い行い
相手を思い、心から役立ちたいと願って行動すること。 - 自慢や承認欲求のための善い行い
「褒められたい」「目立ちたい」という目的が中心になった行動。
表面上は同じように「善いこと」をしているように見えても、その根底にある目的は全く異なります。
自慢のための善行はなぜ問題か
承認欲求そのものは人間にとって自然なものです。
しかし、もし「善い行い」をすべて「自慢のため」にしていると、次のような問題が起こります。
- 本当の意味で他者に貢献できない
行動の中心が「自分」になってしまい、相手のためにならないこともある。 - 人間関係の信頼を失う
周囲から「自己中心的だ」と見抜かれ、信用をなくしてしまう。 - 満足感が続かない
褒められなければ不満を抱き、他人の評価に依存する生き方になる。
つまり「自慢のための善行」は、一見プラスに見えても、長期的には自分も他者も幸せにできないのです。
本当に人のためになる善い行いとは
では「本当の善い行い」とはどのようなものでしょうか。
アドラー心理学では、それを 「共同体感覚に基づいた行動」 と捉えます。
つまり、「自分は社会の一員であり、他者に貢献できている」という意識に根ざした行動です。
たとえば、
- 誰にも見られていなくても困っている人を助ける
- 見返りを求めずにサポートする
- 相手の立場に立って考え、必要なことを実行する
こうした行動は、承認欲求を満たすためではなく「相手のために」という純粋な気持ちに支えられています。
そして不思議なことに、こうした本当の善行こそが最終的に信頼を生み、自分自身の幸福感を高めることにつながるのです。
善い行いを建設的にするための実践法
私たちが日常で「善い行い」をするとき、その動機を少し意識してみましょう。
- 「これは本当に相手のためか?」と問いかける
自分の満足のためか、相手の利益のためかを見極める。 - 感謝や承認を求めすぎない
褒められなくても構わない、と思えるかどうか。 - 小さな貢献を積み重ねる
派手な行動でなくても、日常の中で役立つことを継続する。 - 自分の目的を確認する
「自分が一番になりたい」のではなく「誰かを支えたい」と考える。
まとめ:「善い行い」は目的で決まる
アドラー心理学が教えるのは、「善い行い」には二つの意味がある ということです。
- 人のために本当に役立つ行動
- 自分を大きく見せるための行動
表面的には同じように見えても、その目的によって結果は大きく異なります。
本当に人のためになる善行は、社会に貢献し、信頼を築き、自己成長にもつながります。
一方、自慢のための善行は、信頼を失い、自分を不安定にするだけです。
つまり、善い行いを選ぶ基準は「それは誰のためか?」という問いに尽きるのです。
