政治・経済

『子育て支援の皮肉な真実:高校生扶養控除縮小と増税の足音』

taka

支援の裏で行われる「引き算」の論理

「異次元の少子化対策」という言葉が踊る一方で、現場からは悲鳴に近い声が上がり続けている。その中心にあるのが、扶養控除をめぐる議論である。 現在、政府与党内で検討が進められているのが、高校生がいる世帯に対する「扶養控除の縮小」だ。児童手当の拡充や高校授業料の無償化といった「給付」を手厚くする代わりに、税負担を軽くする「控除」を減らすという、いわゆるトレードオフの論理である。 表向きは「支援の拡充」を謳っているが、国民の目には、片方の手で与え、もう片方の手で奪い取るような「朝三暮四」の対応に映るのではないだろうか。手当が増えても、その分増税されれば、実質的な家計の負担は変わらない。むしろ、控除廃止によって、将来的な負担増への懸念すら抱かせる結果となっている。

「高所得者優遇」という免罪符

政府が控除縮小の理由として挙げるのが、「控除は高所得者ほど減税効果が大きく、不公平である」という理屈だ。確かに仕組み上、所得税率が高い層ほど控除による恩恵は大きくなる。しかし、そもそも高所得者はそれだけ多くの納税を行っている層でもある。 法人税の優遇措置や輸出企業への還付金には手をつけず、なぜ子育て世帯の控除だけを「不公平」として切り捨てるのか。この点に矛盾を感じる国民は少なくない。 かつて16歳未満を対象とした「年少扶養控除」が廃止された際も、同様の議論がなされた。結果として、児童手当という「給付」に切り替わったが、その手当すら所得制限で削られ、結果として「ただの増税」に終わった世帯も多い。今回の高校生への措置も、同じ轍を踏むのではないかという警戒感が、世論の反発を生んでいると言える。

9000億円が語る「奪われた支援」

ここで注目すべき数字がある。かつて年少扶養控除が廃止された際、国と地方を合わせて約9000億円の増収が見込まれたという事実だ。これは裏を返せば、子育て世帯から9000億円を吸い上げたことに他ならない。 現在、年少扶養控除の復活を求める声は根強い。当時の試算である9000億円は、少子化が加速した現在においては、もっと少ない財源で実現可能であるはずだ。それにもかかわらず、政府は復活どころか、今度は高校生の控除まで削ろうとしている。 「支援金」という名目で徴収される新たな負担や、控除の縮小。これらが積み重なることで、現役世代の可処分所得は確実に削られていく。「国難」とまで呼ばれる少子化に対し、本気で向き合うのであれば、給付と控除のどちらかを選ぶのではなく、両輪での支援が必要なのではないだろうか。 政治への信頼が揺らぐ中、我々はこの「見えにくい増税」の正体を、冷静に見極める必要がある。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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