政治・経済

『究極の好景気?日本が目指す「高圧経済」の正体とは』

taka

注目のキーワード「高圧経済」

最近、経済ニュースや政策論争の中で、「高圧経済」という言葉を耳にする機会が増えてきたのではないだろうか。 決して聞き慣れた言葉ではないかもしれないが、実は日本の舵取りを担う重要な機関が、こぞってこの概念に注目している。 例えば、経済産業省は2021年の政策指針において、「財政政策で需要不足を解消し、マイルドなインフレ高圧経済を実現する」と明記し、それが民間投資と長期成長に不可欠であると説いた。 日本銀行の政策決定会合でも、「経済を温めて高圧経済の実現を目指すべきだ」との意見が出され、国民民主党の公約にも「需要が供給を上回る状態で、賃金が健全に上昇する高圧経済」という文言が躍っている。

では、この高圧経済とは一体何を指すのだろうか。 定義はシンプルである。 国内の潜在的な「欲しい」という総需要が、企業が提供できる「供給能力」を大きく上回っている状態のことだ。 買いたい人が溢れかえり、モノやサービスへの需要圧力がパンパンに高まっている経済。 以前解説した「デマンドプル型インフレ」が、さらに強烈に、そして持続的に機能している状態とイメージすれば分かりやすいだろう。

歴史的背景とデータが語る真実

この概念は新しいものではない。 古くは1950年代にアメリカのエコノミスト、ヘンリー・ウォリックによって提唱され、近年では2016年に当時のFRB議長ジャネット・イエレン氏が言及したことで、再び世界的な注目を浴びることとなった。

なぜ今、日本でこの理論が重要視されているのか。 それは過去のデータが雄弁に物語っている。 日本のインフレ率と生産性向上率の関係をプロットしたグラフを見てみると、ある驚くべき相関関係が浮かび上がってくる。 GDPデフレーターベースでのインフレ率が5%前後に達すると、多くの時期において、生産性が飛躍的に向上しているのだ。 特に高度経済成長期などを含めると、生産性向上率が7%以上に達している時期さえある。 「年率7%の向上」といえば、もし10年続けば生産量が2倍になるという、凄まじい成長スピードである。

「作れば売れる」熱狂の世界

GDPデフレーターで5%のインフレというと、私たちが普段目にする消費者物価指数に換算すれば、おそらく7%前後のインフレ状態になるだろう。 今の感覚で言えば「物価が上がりすぎて生活が苦しいのではないか」と不安になるかもしれない。 しかし、高圧経済の本質は、単なる物価高ではない。 「経済が過熱している」と表現するほうが正しいだろう。

この世界では、とにかく「作れば売れる」。 需要が供給を追い越しているため、企業経営者は機会損失を恐れ、死に物狂いで設備投資を行う。 最新の機械を導入し、効率化を進めることで、生産性は劇的に引き上げられる。 企業が儲かり、人手不足が加速するため、働く人々の実質賃金もまた、上昇気流に乗っていく。 みんなが豊かになり、ガンガン消費し、家を建てる。 すると需要はさらに膨れ上がり、供給サイドには「もっと作れ、もっと効率よく」という強い圧力がかかり続ける。

一生に一度の体験

これこそが、英語で「ハイプレッシャー・エコノミー」と呼ばれる状態だ。 経済というエンジン内の圧力を極限まで高め、社会全体をフル回転させるシステム。 失われた数十年と呼ばれる停滞を経験してきた私たちにとって、それは未知の領域かもしれない。 しかし、理屈を知れば知るほど、その熱気を感じてみたいと思わないだろうか。 好循環が止まらない、圧倒的な好景気。 私も一生に一度くらいは、この「高圧経済」という名の熱狂を、肌で感じてみたいと本気で願っている。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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