人間の本性は変わらない——ジョージ・ワシントンとピアリー提督に学ぶ「批判される勇気」
「殺人者より少しましな偽善者」と呼ばれた英雄
「殺人者より少しましなだけの偽善者」。
こう酷評された人物が、アメリカ史上最も尊敬される初代大統領ジョージ・ワシントンであると聞けば、多くの人が驚くでしょう。
デール・カーネギー『道は開ける』によれば、当時の新聞や風刺漫画では、
ワシントンが断頭台に縛り付けられ、群衆の罵声を浴びる姿が描かれていたといいます。
いまや「建国の父」として称えられるワシントンでさえ、
その時代には激しい批判や誤解の的となっていたのです。
このエピソードは、ひとつの真理を示しています。
「人間の本性は今も昔も変わらない。」
時代を超えて変わらない“嫉妬と批判”の心理
カーネギーは続けます。
「それは昔の話だが、今では人間の本性は改善されただろうか?」
その問いに対する答えは、「否」です。
彼はその証拠として、20世紀初頭のアメリカ海軍の英雄、ロバート・ピアリー提督の例を挙げています。
ピアリー提督は1909年、世界で初めて北極点到達に成功した探検家。
人類史に残る偉業を成し遂げたにもかかわらず、
上官たちは彼の成功を妬み、「調査費を流用して北極で遊んでいる」と告発しました。
それでもピアリーは、マッキンリー大統領の理解と支援を得て探検を続け、ついに成果を上げました。
成功には、必ず“嫉妬の影”がついてくる
もしピアリーが地味に海軍で任務をこなしていたら、
おそらく批判も受けず、平穏に過ごせたでしょう。
しかし、彼は人類初の挑戦に挑みました。
そして成功した瞬間から、嫉妬や中傷の矢が彼に向けられたのです。
これは現代の私たちにもそのまま当てはまります。
- 新しい挑戦をすると「目立ちたがり」と言われる
- 出世すると「運がいいだけ」と言われる
- 成功すれば「裏がある」と疑われる
どの時代にも、光が強いほど影も濃くなるという法則が存在します。
そして、その影を作るのは他人の嫉妬や恐れなのです。
人間の本性を理解すれば、批判は怖くなくなる
カーネギーがこの章で伝えたかったのは、
「批判や悪意をなくすことは不可能だ」という冷静な現実です。
だからこそ、私たちがすべきなのは「怒ること」でも「悲しむこと」でもなく、
人間の本性を理解して、動じない心を持つことです。
人は、自分より優れた者を批判することで、安心感を得ようとする。
これは人間が本能的に持つ“自己防衛”の一形態である。
そう理解すれば、他人の中傷は相手の不安の表れであり、
自分に向けられた個人的な敵意ではないとわかります。
嫉妬や批判を超えて、信念を貫く勇気を
ジョージ・ワシントンも、ピアリー提督も、そして数多の偉人たちも、
同じように批判を受けながら、その信念を曲げませんでした。
彼らに共通していたのは、**「正しいと思うことをやり続ける強さ」**です。
他人の声に惑わされず、自分の道を歩み続ける——
それこそが、カーネギーが説く「心の平安」を得るための唯一の方法です。
人間の本性は変わらない。
だからこそ、他人の悪意を嘆くより、
その中でどう生きるかを選ぶことが大切なのです。
まとめ:批判されることを恐れず、自分の信念を生きよう
ジョージ・ワシントンも、ピアリー提督も、そして現代の私たちも、
同じ「人間の本性」の中で生きています。
批判も嫉妬もなくならない。
それでも、自分の信念を曲げずに歩む人こそが、
最終的に尊敬され、歴史に名を残すのです。
「批判は避けられない。だが、それに耐える者が未来をつくる。」
その覚悟こそが、デール・カーネギーの語る「心の成熟」なのです。
