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はじめに
変形性膝関節症(KOA)は軟骨変性のみならず、骨下組織(subchondral bone)の硬化や骨棘形成を伴う複雑な病態です。
近年、膝関節脂肪体(IFP)が分泌するサイトカインやアディポカインが、骨下組織リモデリングに影響を及ぼす可能性が注目されています。
アディポネクチンと骨芽細胞
- in vitro研究によると、骨棘由来の骨芽細胞はアディポネクチン刺激によりp38 MAPK経路を介して活性化。
- 一方、期待されたWntシグナル経路は活性化されず、OA病態における役割の理解を難しくしています。
- アディポネクチンは他の組織ではWnt経路を活性化すると報告されており、骨下組織特異的な応答の可能性が示唆されます。
他のアディポカインと骨下組織応答
レプチン(Leptin)
- Wnt経路を活性化する代表的アディポカイン。
- 骨芽細胞増殖を促進し、骨硬化や骨棘形成に関与。
ビスファチン(Visfatin)
- 骨芽細胞に作用し、IL-6やMCP-1などの炎症性サイトカイン産生を誘導。
- 骨下組織の炎症性リモデリングに寄与する可能性。
SAA3(Serum Amyloid A3)
- 細胞外マトリックス修復、骨リモデリング、骨吸収、骨格発達に関与。
- 骨代謝全般に作用する因子として、IFP由来SAA3がKOA病態に関与する可能性が高い。
IFPと骨下組織のクロストークの可能性
現時点での知見は限定的ですが、
- IFP由来アディポカインが骨芽細胞や骨リモデリングに影響する
- 炎症性サイトカインの局所産生を介して骨硬化や骨棘形成を促進する可能性
が示されています。
👉 ただし、研究はまだ初期段階であり、IFPが骨下組織に与える直接的な影響は今後の重要な研究課題です。
まとめ
膝関節脂肪体(IFP)はこれまで「炎症のハブ」として主に滑膜や軟骨との相互作用が注目されてきましたが、近年は骨下組織とのクロストークにも焦点が当たりつつあります。
- アディポネクチン:p38 MAPK経路を介した骨芽細胞活性化
- レプチン:骨芽細胞増殖と骨硬化促進
- ビスファチン、SAA3:炎症性・代謝性因子として骨リモデリングに寄与
これらの知見は、IFPがKOAの骨変化を調整する可能性を示しており、将来的な治療ターゲットとしての意義を持ちます。