宇宙とは変化である
マルクス・アウレリウスは『自省録』に次のように記しました。
「宇宙とは変化である。人生とはその人の考えである」
これは、私たちがどれほど現状を固定的に捉えたくても、世界は常に流動しており、止まることがないという真理を示しています。重要なのは「変化そのもの」ではなく、「その変化をどう考えるか」なのです。
テセウスの船――同じものか、別のものか?
プルタルコスの『テセウス伝』には有名な問いかけがあります。アテネの人々は英雄テセウスの船を何世紀にもわたり保存していましたが、木の板が朽ちるたびに交換し、最終的にはすべての部材が新しいものに置き換わりました。それでもなお、それを「テセウスの船」と呼べるのか、それとも別物と呼ぶべきなのか――。
この問いは「アイデンティティ」と「変化」の関係を考えさせてくれます。同じように、日本のある神社では定期的に社殿を建て替えていますが、私たちはそれを「同じ神社」と認識します。変化は途切れなく続いていても、私たちはそこに「同一性」を見出しているのです。
私たち自身もまた変化している
変化は組織や物だけでなく、私たちの身体や心にも当てはまります。爪は伸びて切られ、肌は古いものから新しいものへと入れ替わります。記憶もまた、古いものが消え、新しいものに置き換わっていきます。
それでも私たちは「同じ自分」であると感じますし、周囲の人々についても「同じ人」として関わり続けます。この認識こそが、変化をつなぐ「物語」なのかもしれません。
変化を恐れる心と向き合う
多くの人は、変化に不安を抱きます。職場の異動、家庭環境の変化、健康の衰え――こうした出来事を「悪いこと」と捉えてしまいがちです。しかしストア派哲学が教えるのは、変化そのものは善でも悪でもなく、中立的な事実だということです。善悪を決めるのは私たちの「考え方」なのです。
日常での実践法
- 変化を前提にする
「変わらないこと」の方が例外だと理解することで、変化に柔軟になれます。 - 自分の物語を再構築する
環境や立場が変わっても、「自分はこういう人間だ」という核を持ち続ければ安心できます。 - 小さな変化を楽しむ
新しい習慣や趣味を取り入れることで、変化を「不安」ではなく「刺激」と感じられるようになります。 - 変化を学びの機会と捉える
予期しない出来事を「新しい知識や経験を得る場」と思えば、前向きに受け止められます。
まとめ:変化の中に生きる
すべては移りゆき、私たちはその流れの中で生きています。大切なのは変化を止めることではなく、それをどう受け止めるか。マルクス・アウレリウスの言葉が示すように、「宇宙は変化であり、人生はその人の考え」です。
変化を恐れるのではなく、そこに新しい意味や可能性を見出すとき、私たちはよりしなやかで豊かな人生を歩むことができるでしょう。