政治・経済

『輸入物価75%上昇の衝撃。コストプッシュインフレへの処方箋』

taka

異常値を叩き出した経済指標

日本銀行が毎月公表している「企業物価指数」というデータをご存じだろうか。かつては卸売物価指数と呼ばれていたもので、企業間で取引されるモノの価格変動を示す重要な指標である。この指数は、国内、輸出、輸入の三つに分類されるが、今、最も注視すべきは「輸入物価指数」の動向である。 昨今の世界情勢、特にロシア・ウクライナ戦争の勃発と、歴史的な円安水準の影響を受け、この輸入物価指数が常軌を逸した上昇を見せているからだ。 具体的な数字を見れば、事態の深刻さがわかる。二〇二〇年の数値を一〇〇とした場合、二〇二二年六月時点での円建て輸入物価指数は一七五を超えてしまった。わずか二年の間に、日本に入ってくるモノの平均価格が七五パーセントも跳ね上がったことになる。

円安と戦争が招いた「悪いインフレ」

この急騰の背景には、複合的な要因が絡み合っている。まず、契約通貨ベース(ドルなど)で見ても、資源価格の上昇により数値はすでに二〇〇八年の資源バブル期を上回り、史上最高値を更新している。そこに、急激な円安が追い打ちをかけた。 二〇二二年六月のデータでは、一年前と比較して円ベースで約四五パーセント、契約通貨ベースでも約二八パーセントの上昇を記録している。 以前解説した通り、日本の輸入依存度は主要国の中で比較的低い。しかし、問題はその「中身」にある。輸入しているモノの過半数が、食料、鉱物性燃料、工業用原料といった、国民生活や産業活動に不可欠な必需品なのである。 パンデミックによる供給網の混乱や戦争という非常事態に加え、円安による輸入コストの増加。これらが重なり、原材料費の高騰が物価を押し上げる「コストプッシュ型インフレ」が発生している。これは需要が増えて景気が良くなるインフレとは異なり、国民生活を圧迫する苦しいインフレといえる。

今すぐ打つべき手、未来のために打つべき手

では、この危機に対して政府はいかなる手を打つべきか。 短期的には、コストプッシュ型インフレによって目減りしてしまった国民の可処分所得を補う措置が急務である。各種の減税や給付金の支給を行い、家計の痛みを和らげる必要があるだろう。 しかし、それだけでは根本的な解決にはならない。長期的には、輸入に依存している必需品を、可能な限り自国で生産できる体制へとシフトさせる必要がある。すなわち、政府主導による大規模な投資拡大である。 具体的には、食料自給率とエネルギー自給率の向上だ。特に食料自給率については、現在の農業政策を見直すだけで改善の余地は大いにある。エネルギーについても、日本周辺海域の資源開発や、新技術による工業用原料の確保など、将来を見据えた国家戦略が求められる。

「あるのに使わない」矛盾からの脱却

自給率の向上といっても、決して夢物語ではない。日本には、国内に豊富な資源がありながら、わざわざ外国に依存している奇妙な例がある。それが「木材」だ。 日本は世界有数の森林大国であり、本来であれば木材は十分に自給可能である。しかし、自由貿易という美名の下、安価な輸入材に頼り続けてきた結果、国内の林業は衰退し、供給能力が弱体化してしまった。 そのツケが回ってきたのが、二〇二一年の「ウッドショック」である。輸入木材の価格が高騰し、住宅建設現場などが大混乱に陥った。同年九月の木材・林産物の輸入価格は、前年末比で六九パーセントも上昇している。 自国で供給可能な資源は、可能な限り国産に切り替える。この当たり前の原則に立ち返らなければ、今後も私たちは「○○ショック」という名の価格高騰に、何度でも翻弄され続けることになるだろう。今こそ、経済の足腰を鍛え直す時である。

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TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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