読解力があれば独学でも道は開ける ― ベンジャミン・フランクリンに学ぶ「自ら学ぶ力」
学校教育よりも大切な「読む力」
アメリカ建国の父のひとり、ベンジャミン・フランクリンは、わずか2年間しか学校に通っていませんでした。
にもかかわらず、彼は印刷業、科学、政治、外交など、あらゆる分野で成功を収めています。
その原点にあったのは、「読解力」でした。
彼は自伝の中でこう語っています。
「数字に疎く、何度も恥をかいたが、16歳のとき算術書を独学で学んだところ、思いのほか簡単に理解できた」と。
つまり、自ら読み、考える力があれば、人はいつでも学び直せるということを実践していたのです。
フランクリンは、当時の定番算術書を自分で開き、理解できるまで読み込みました。
その結果、「自分にもできる」という自信を得て、学びの楽しさを感じるようになったといいます。
この体験は、後の彼の人生における“独学の哲学”の原点になりました。
興味が知識をつなぐ ― 航海術と幾何学
フランクリンは海に憧れていたため、航海術の本を好んで読んでいました。
この「興味のあるテーマ」を入り口にして、自然と幾何学や数学の知識にも触れるようになったのです。
重要なのは、最初から難しい理論書に挑むのではなく、自分が面白いと思える分野をきっかけに学びを広げた点です。
興味を持てるテーマは、学びを継続する最大のモチベーションになります。
フランクリンはそれを本能的に理解していたのでしょう。
私たちも、新しい知識に挑戦する際、いきなり「専門書」を読もうとせずに、
「好き」や「関心」から始めることが、結果的に学びを深める近道になります。
哲学書との出会い ― 思考の技法を学ぶ
算術や航海術を学んでいた頃、フランクリンはジョン・ロックの**『人間知性論』や、フランスのポール・ロワイヤル派による『思考の技法』**にも親しんでいました。
どちらも「人がどのように考え、理解し、判断するのか」を探る哲学的な書物です。
このような哲学書に早くから触れていたことは、彼の論理的思考力や批判的視点を鍛える基盤になったと考えられます。
つまり、フランクリンは「読解力」を通して、知識を得るだけでなく、考える力そのものを磨いていたのです。
今日の私たちにとっても、この姿勢は非常に示唆に富んでいます。
インターネットで情報があふれる時代だからこそ、何をどう読み、どう考えるかという“読解力”が問われています。
独学の本質は「自分を信じること」
フランクリンの自伝にあるこのエピソードは、単なる成功者の昔話ではありません。
彼が示しているのは、**「学びにおいて必要なのは、才能ではなく姿勢だ」**という普遍的な真理です。
彼は学校に長く通えなかった劣等感を持ちながらも、自ら学び直し、社会に貢献する人物へと成長しました。
独学とは、孤独な努力ではなく、自分の可能性を信じて知識を広げていくプロセスです。
現代においても、語学、プログラミング、デザイン、心理学など、独学で学べる分野は無限にあります。
そしてその出発点にあるのは、「読む力」と「考える習慣」です。
まとめ:読解力が人生を変える
ベンジャミン・フランクリンは、読書を通して世界を広げ、行動で人生を切り開いた人物です。
彼のように、「わからない」ことを恥じず、「知りたい」気持ちを行動に変えることが、学びの第一歩です。
どんな時代でも、どんな環境でも、学ぶ力は自分の中にあります。
読解力を鍛え、自分で考える習慣を身につけることこそ、真の意味での「独学の力」といえるでしょう。
