人の心を奮い立たせるリーダーになる――ペテロ第二の手紙1章13節に学ぶ“励ましの使命”
人の心を奮い立たせるリーダーになる――ペテロの最期のメッセージ
ペテロ第二の手紙1章13節には、人生の終盤を迎えたペテロが、深い思いを込めてこう語っています。
「私は、この幕屋(からだ)にいる間、あなたがたに思い起こさせて、心を奮い立たせるのが正しいと思っている。」(ペテロ第二1:13)
ペテロは、自分の死期が近いことを自覚しながらも、
「最後まで人の心を奮い立たせることこそ、自分の務めだ」と語っています。
それは、単なる指導者としての責任ではなく、人生の使命としてのリーダーシップです。
1. 「教えること」よりも「思い起こさせること」
ペテロの言葉の中で注目すべきは、「新しいことを教える」とは言っていない点です。
彼がしたいのは、人々に“思い起こさせる”こと。
つまり、すでに知っているはずの真理や価値を再び心に呼び覚ますことです。
多くの人は、知識が足りないのではなく、
**大切なことを“忘れている”**だけなのです。
- なぜこの仕事を始めたのか
- 誰のために努力しているのか
- 何を大切に生きていきたいのか
ペテロは、リーダーの役割とは「新しい情報を与えること」ではなく、
人が忘れかけた“原点”を思い出させることだと示しています。
2. 心を奮い立たせるとは、“内側の炎”を再び灯すこと
「心を奮い立たせる」とは、人を感情的に盛り上げることではありません。
それは、人の内側にある“本来の力”を再び目覚めさせることです。
励ましの言葉によって、自分の価値や使命を思い出したとき、
人は自然と立ち上がり、再び前に進む力を取り戻します。
リーダーや教師、親、上司――どんな立場であっても、
人の心に火を灯すことができる人は、周囲に希望を生み出す存在です。
3. リーダーの使命は「人を支配すること」ではなく、「人を立たせること」
ペテロは、自分を偉大な存在として誇ることはしませんでした。
むしろ、「自分が生きている間に人々を励まし続けることが務めだ」と語っています。
本当のリーダーとは、人を自分の下に従わせる人ではなく、
人が自分の足で立ち、自分の使命に気づくよう導く人です。
権威や命令によって人を動かすのではなく、
信頼と愛によって人の心を奮い立たせる――
その姿に、成熟したリーダーシップの本質が見えます。
4. ペテロが老いてなお人を励ます理由
ペテロはこの手紙を書いた時点で、すでに老年期にあり、
自らの命が長くないことを悟っていました。
それでもなお、彼が筆を取ったのは、
**「自分の経験を通して、人々を励まし続けたい」**という強い願いがあったからです。
彼は過去に何度も失敗し、恐れ、裏切り、涙を流した人物でした。
だからこそ、彼の言葉には説得力と温かさがあります。
経験を通して得た知恵を伝え、
次の世代に“希望の火”を受け渡すこと――
それが、ペテロが晩年に見出した「生きる意味」だったのです。
5. 現代に生きる私たちへのメッセージ
この言葉は、現代を生きる私たちにも大切な問いを投げかけます。
「あなたは、誰の心を奮い立たせているだろうか?」
日々の忙しさの中で、誰かを励ますことを後回しにしていませんか?
人を支えることは、特別な能力ではなく、小さな関心や言葉から生まれる愛の行為です。
- 落ち込む同僚に、ひと言の「大丈夫」を伝える
- 子どもの努力を静かに認める
- 部下の成長を信じて待つ
こうした行動が、あなたの周りの人の心を奮い立たせるのです。
6. リーダーが持つべき“励ましの姿勢”
ペテロの姿勢から、リーダーが学ぶべきポイントをまとめると次の3つになります。
① 思い出させる力
新しい知識よりも、「大切なことを思い出させる言葉」を伝える。
② 信頼する姿勢
人の中にある成長の力を信じ、押しつけずに見守る。
③ 最後まで励まし続ける意志
自分の役割が終わる瞬間まで、人の心を奮い立たせる使命を忘れない。
この3つの姿勢を持つ人こそ、人を導くリーダーであり、人生の教師です。
まとめ:人の心に火を灯す者であれ
ペテロ第二の手紙1章13節が教えるリーダー像をまとめると、こうなります。
- リーダーの役目は「新しいことを教える」より「原点を思い出させる」こと
- 励ましとは、相手の中に眠る力を呼び覚ますこと
- 支配ではなく、信頼と愛で人を立たせること
- 最後の瞬間まで、人の心を奮い立たせることが使命
「私はあなたがたを思い起こさせ、心を奮い立たせたい。」
人を奮い立たせる力は、知識や地位ではなく、愛と信頼の心から生まれます。
あなたも今日から、誰かの心に灯をともす存在になってみませんか。
