政治・経済

移民政策の曖昧さが残した深い影

taka

移民の定義と日本の曖昧さ

国際的な基準では、居住地を越えて移動し、一年以上滞在する人を「長期移民」と呼ぶとされている。だが日本では、この定義を法に明確に組み込まず、「外国人労働者は移民ではない」とする独自の解釈が長く続いてきた。曖昧さを盾に、実態を移民でありながら移民と認めない政策が進められた結果、日本国民にも移民当事者にも負担が生じたといえる。

国民と移民双方に生じた歪み

日本国民に押し付けられたのは、気づけば祖国が移民国家化していたという現実である。一方、移民は転職の自由すら持てず、低賃金・厳しい労働環境に置かれる場面が少なくなかった。政策としては移民受け入れでありながら、その不人気を恐れ「移民政策ではない」と否定し続けたことが、両者に不幸をもたらしたといえる。

進められてきた実質的な移民政策

技能実習生制度の拡大、観光立国政策、ビザ緩和、経営管理ビザ制度の改定、特区民泊の開始、民泊法の施行、不動産業者向けの国際対応マニュアルなど、2010年代以降の政策は、外国人の流入を促す流れで一貫していた。入管法改正による特定技能制度の創設もその一つである。こうした流れを支持したのは、当時の政権を選んだ国民自身でもある。

本来必要だった移民政策とは

もし移民を受け入れるのであれば、シンガポールのように、低技能と高技能を明確に区分し、それぞれに全く異なる制度を適用する仕組みが必要だった。低技能労働者は労働需給の調整役とし、大規模な集住や定住化を防ぐ。高技能労働者には特典を与え、永住権や国籍の取得へ道を開く。徹底した区別と管理が政策の根幹を成している。このレベルの運用を、日本が実行できたかと問われれば、現実には困難であったといえる。

曖昧さの果てに生まれた現状

日本の政治家に強い反発を招く政策を主張する勇気は乏しく、一方で経済界の安価な労働力を求める声には抗えなかった。その結果、技能実習生を「労働力」として扱いながら、インバウンド推進、経営管理ビザ、民泊制度、不動産投資促進などが積み上げられた。2018年にはついに技能実習生にも永住の道が開かれ、もはや「移民政策ではない」という言い逃れは成り立たなくなった。これこそが日本の移民政策の実態であるといえる。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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