「補正予算が映す日本財政の転換点」
補正予算が示す現在地
高市内閣の補正予算がまとまり、経済対策は総額21.3兆円、そのうち政府の補正予算は17.7兆円規模と明らかになった。財政投融資を含めた数字であり、短期的な景気下支えとしては妥当といえる。ただ、この議論で本質となるのは、政府が掲げ続けてきた「プライマリーバランス黒字化目標」との整合性である。現在もなお、2025〜2026年度の黒字化が閣議決定として残されたままになっている。
通常予算が抑制される構造
問題の核心は、通常予算がPB目標によって縛られ、必要な支出が補正予算に押し込まれてきた点にある。本来、経済の実情を踏まえれば、企業や社会が求める投資額は明らかであり、特に土木建設、医療、介護、宿泊、教育など幅広い分野で供給能力不足が顕在化している。
デフレはすでに2023年時点で脱却したとみられ、GDPデフレーターもプラス化した。にもかかわらず、供給力を増強する予算が通常予算では十分に確保されず、補正で穴埋めする状況が続く。この構造が、民間の長期的な設備投資をためらわせてきたといえる。
日本に欠けた「長期計画」
いま日本に必要なのは、単年度の補正ではなく、国全体の供給力を底上げする長期的な計画である。食料やエネルギーの確保、土木建設の維持強化といった国家の基盤に関わる領域ほど、その重要性は大きい。
ところが日本には、主要国では当然とされる国土計画が存在しない。以前は中曽根内閣の時代に作成され、5年から10年のプロジェクトと予算規模が明確に示されていた。駅や高速道路の整備位置が可視化されることで、民間企業は安心して投資判断を行えたのである。
PB目標からの転換が不可避
本来、計画は予算とは別であり、単年度主義と矛盾しない。しかし財務省は「単年度予算の原則」を理由に長期計画を退けてきた。一方で、財政健全化のためのPB黒字化は長期計画として掲げ続けるという矛盾もある。
今必要なのは、この構造そのものの見直しである。PB目標を骨太の方針から外し、事実上の棚上げにする。政府債務のGDP比率が安定的に低下すればよいという、国際基準に沿った指標への切り替えが現実的だといえる。
未来への投資を可能にするために
補正予算自体は否定されるべきではない。ただし、重要なのは通常予算の安定的な拡大であり、企業に「長期の需要は確実に存在する」という確信を与えることである。補正で一時的に仕事が生じても、翌年以降の見通しが不透明なら設備や人材への投資は進まない。
供給力不足が日本経済の制約となる今こそ、財政の姿勢を転換し、長期計画を再構築する局面にあるといえる。
