政府債務比率低下に隠された残酷な真実
曖昧な定義と低下し続ける債務比率
ニュースなどでよく耳にする「国の借金問題」。実は、政府債務という言葉の定義は非常に曖昧である。国と地方を合わせるのか、資産を差し引いた純債務で見るのかなど、基準によって数字は大きく変わる。財政破綻を煽る一部の論者は、この曖昧さを巧みに利用して危機感を煽っているといえる。しかし、どのような定義を用いたとしても、現在日本の「政府債務対GDP比率」は確実に低下し続けている。これは紛れもない事実である。
なぜ借金の比率は下がっているのか
では、長年の借金問題は解決に向かっているのだろうか。残念ながらそうではない。比率が低下しているのは、分子である借金が減ったからではなく、計算式の分母である「名目GDP」が上昇した結果に過ぎない。しかもこれは、政治の輝かしい手柄などではない。名目GDPが上昇に転じた本当の理由は、経済の健全な成長ではなく、「サプライロス型インフレ」によって物価が強制的に押し上げられたためなのである。
供給力を破壊した緊縮財政の罪
サプライロス型インフレとは、モノやサービスを作り出す供給能力そのものが不足することで起きる、厄介な物価高である。長引くデフレの中、政府は「プライマリーバランスの黒字化」という緊縮財政の目標を頑なに守り続けてきた。その結果、日本国内の生産基盤や投資は停滞し、経済の供給能力は長期にわたって削ぎ落とされてしまった。皮肉なことに、この供給力の喪失こそが現在の悪いインフレを引き起こした根本原因といえる。
凋落の果てに合う数字の辻褄
流れを整理しよう。緊縮財政によってデフレが長期化し、国の供給能力が失われた。それが現在のインフレを生み出し、名目GDPを計算上押し上げ、結果として政府債務の比率を下げているのである。国家の経済力を根本から凋落させた果てに、ただ数字の辻褄だけが合っていく。これはあまりにも残酷で、信じがたい現実である。政治家は表面的な数字の改善に安堵するのではなく、この亡国に至る恐ろしいプロセスを今こそ直視しなければならない。
