政治・経済

「日本は借金大国」の誤解と緊縮の代償

taka

借金大国というイメージの正体

日本は世界でも屈指の借金大国──そう信じている人は多い。
その印象を強めてきたのが、財務省が示す「債務対GDP比」のグラフである。
値が大きく見えるため、日本の財政は危機的状況だと受け取られやすい構造になっている。
だが、この指標そのものが実態を大きく歪めているといえる。

もう一つのグラフが示すまったく違う姿

政府債務を議論する際、本来見るべきは「どれだけ債務が増えたか」という推移である。
2001年を100とした政府債務の指数グラフを見ると、日本の債務残高は主要国の中で最も伸びていない。
むしろ、世界の先進国と比べても増加率は極めて低い。
債務対GDP比で危機を煽る見せ方と、実際の債務推移とのギャップがここに現れているといえる。

財政出動の少なさが生んだ停滞

さらに、各国の政府総支出の伸び率を比較したグラフでは、日本は90年代以降で最も支出を抑えてきた国として示されている。
つまり、日本は「国民のためにお金を使わない国」になっていたのである。
財務省の強い緊縮志向により、意図的に財政余力を小さく見せる情報が繰り返し使われてきた。
テレビや新聞もそのまま報じ、国民の間に「借金が危ない」という先入観が定着した。

30年停滞を招いた構造的な思い込み

日本が長期停滞に陥った背景には、この「借金が危険」という前提に基づく緊縮財政がある。
本来、不景気時には減税や財政出動を通じて政府が積極的に支出し、民間の落ち込んだ需要を補う必要がある。
ところが日本はその逆を進み、景気が悪い局面で増税を重ね、支出を削ってきた。
国民の使えるお金が減る中で追加の負担を課し、経済が回復しない状態を自ら作り続けてきたといえる。

誤認を正し、現実に即した議論へ

「日本は借金大国」というイメージは、指標の選び方ひとつで大きく変わってしまう。
債務対GDP比だけを根拠に危機を煽るのではなく、債務の増加ペースや政府支出の推移こそが実態を映し出す。
日本が30年成長できなかった背景には、こうした誤認に基づく政策判断が積み重なってきたという点を、改めて見つめ直す必要がある。
事実を丁寧に読み解くことで、ようやく本来あるべき経済運営が見えてくる。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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