政治・経済

『データが暴く嘘。日本は本当に「輸出依存国」なのか?』

taka

刷り込まれた「貿易立国」の幻想

「日本は資源のない島国であり、海外にモノを売らなければ生きていけない」。私たちは幼い頃から、こうした言説を繰り返し耳にしてきた。メディアや教育の現場で語られる「貿易立国」という言葉には、ある種の強迫観念が張り付いているように思える。それは、「日本経済はグローバル市場に依存しなければ成立しない。だからこそ、世界の潮流やルールに逆らってはならない」という、どこか従属的な思想である。

この考え方は、日本国憲法の前文にある国際協調の精神にも通じるものがあるかもしれない。しかし、前提となっている「日本は輸出に過度に依存している」という認識は、果たして事実に基づいているのだろうか。「輸出依存国だからこうすべきだ」と国のあり方を議論するならば、その土台となる現状認識が正確でなければ、すべての議論は砂上の楼閣となってしまう。

データが示す「内需大国」という真実

ここで、感情論や長年の思い込みを排し、冷徹な数字と向き合ってみよう。かつて、経済評論家の三橋貴明氏が、主要国の輸出依存度を比較したグラフを公表し、大きな波紋を呼んだことがある。そのデータが示したのは、世間の常識とは真逆の事実であった。

実は、日本の輸出依存度は、世界的に見ても極めて低い水準にある。2020年の統計を見ても、日本より輸出依存度が低い国は、巨大な国内市場を持つアメリカや、人口大国のインドくらいしか存在しない。ドイツや韓国といった国々と比較すれば、その数値の低さは歴然としている。

すなわち、日本経済の実態は、外国の需要に頼り切った脆弱な構造ではなく、国内の活発な消費と投資によって支えられている、世界有数の「内需大国」なのである。この事実を知らずして、日本経済の未来を語ることはできない。

結論ありきの議論への警鐘

ちなみに、ここで議論されている輸出依存度とは、自動車や機械といった「財」の輸出額を名目GDPで割ることで算出される。サービスの輸出は含まれていない点には留意が必要だが、それを差し引いても、日本の経済規模に対する輸出の割合が相対的に小さい事実は揺るがない。

興味深いのは、この事実が広く知られるようになり、経済産業省までもがデータを公表し始めた後の反応である。かつて「日本は輸出依存度が高いからグローバル化すべきだ」と声高に叫んでいた評論家たちは、データが示された途端、「日本は輸出依存度が低い。だからこそ、もっとグローバル化を進めなければならない」と主張を転換させたという。 結局のところ、彼らにとって「グローバル化」という結論こそが重要であり、現状分析はそのための手段に過ぎなかったということだろうか。論理の整合性よりも結論を優先する姿勢には、危うさを感じざるを得ない。

輸入依存度と戦略的視点

もちろん、輸出依存度が低いからといって、輸出が全く不要であるとか、鎖国をしても平気だなどという極論を述べたいわけではない。経済は複雑な相互依存の中にあり、オールオアナッシングで語れるものではないからだ。しかし、事実誤認に基づいた議論は、国家の進路を誤らせる原因となる。

また、視点を変えて「輸入依存度」を見てみても、日本は約12パーセント程度と、主要国の中ではアメリカに次いで低い水準にある。数字の上では、日本は輸出入ともに依存度が低い、自律性の高い経済圏を持っているといえる。 ただし、輸入に関しては数字の大小だけで安心することはできない。たとえ金額ベースでの依存度が低くとも、その中身がエネルギーや食料といった、国民の生存に直結する必需品であれば、戦略的な重要性は跳ね上がる。

数字という客観的な指標を正しく読み解き、その中身まで吟味する視点を持って初めて、私たちは日本経済の正しい姿を捉えることができるのである。イメージに流されず、事実をもとに思考すること。それこそが、現代を生き抜くために必要な知性といえるのではないだろうか。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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