話すだけで思考が深まる!『壁打ちは最強の思考術である』に学ぶ“考える力”の鍛え方
「話す」だけで思考が深まる──“壁打ち”という最強の思考法
「なんとなくモヤモヤして考えがまとまらない」
「会議ではうまく言語化できずに終わってしまう」
そんな経験をしたことがある人におすすめしたいのが、伊藤羊一さんの新刊『壁打ちは最強の思考術である』(飛鳥新社)です。
著者は『1分で話せ』で有名なビジネス書のベストセラー作家。
本書では、**「話すことで思考を整理し、アイデアを形にする力」**を高める方法として、「壁打ち」という思考術を紹介しています。
壁打ちとは?──頭の中の“モヤモヤ”を言葉にしていく技術
壁打ちとは、もともとテニスの練習に使われる言葉。
相手のいないときに壁に向かってボールを打ち、跳ね返ってきたボールを受け止める練習法です。
伊藤さんはこれを思考に応用し、
「自分の中にある整理されていない考え=モヤモヤ」を、他者との対話を通して言葉にしていくプロセスを「壁打ち」と呼んでいます。
つまり、話すことで自分の思考を“見える化”し、構造化していく方法です。
ノートに書くことでも整理はできますが、
他者と話すことで「第三者の視点」が入り、自分では気づけなかった観点を得られるのが壁打ちの最大のメリット。
壁打ちがもたらす3つの効果
著者によると、壁打ちは「思考を広げ・深め・固める」3つのステップで効果を発揮します。
① 思考を広げる
人と話すことで、自分の考えが想定外の方向に広がります。
一人で考えていると結論を急いでしまいがちですが、壁打ちは「問い」を共有することで思考の幅を広げてくれるのです。
② 思考を深める
壁打ちでは、「SO WHAT?(それで?)」「WHY?(なぜ?)」という質問が繰り返されます。
これによって具体と抽象を行き来しながら、本質を掘り下げる思考が自然と身につきます。
③ 思考を固める
最後に「TRUE?(本当に?)」という視点で、自分の考えを俯瞰。
これにより、アイデアを実行可能なレベルまで精錬できます。
この3ステップを繰り返すことで、会議や企画立案でもぶれない思考軸が生まれます。
会議でも雑談でもない、“壁打ち”という新しい会話
壁打ちは、会議とも雑談とも違います。
- 会議のように「結論」を出す必要はない
- 雑談のように話題が散らかってもOK
- 1on1のように「内面」ではなく「課題」にフォーカスする
つまり、自由でありながら目的がある会話。
たとえば「こんなアイデアがあるけどどう思う?」というモヤモヤをぶつけ、相手から返ってきた反応をヒントに考えを整理していく。
このやりとり自体が“思考の筋トレ”になるのです。
実践!壁打ちを使う3つのタイミング
著者は、壁打ちを活用すべきタイミングとして次の3つを挙げています。
① プロジェクト開始前(ゼロ地点の壁打ち)
何も決まっていない段階でもOK。
まずは「こういうことを考えてるんだけど…」と口に出すことで、アイデアの輪郭が見えてきます。
② 途中でつまずいたとき(踊り場の壁打ち)
計画が進まず迷ったときは、「そもそもなぜ?」と原点に立ち返る壁打ちを。
ズレを見直し、軌道修正のきっかけをつくります。
③ プロジェクト終了後(ふりかえりの壁打ち)
「何ができたのか」「何が課題だったのか」を言語化し、学びを次に活かします。
単なる反省会ではなく、ポジティブな成長の場として活用できるのがポイントです。
壁打ちを成功させる“3つのコツ”
1. 「心理的安全性」を確保する
壁打ちは、モヤモヤをそのまま話す行為。
「否定されない」「安心して話せる」相手でなければ成立しません。
相手の話を途中で遮らず、「それで?」「なるほどね」と受け止める姿勢が大切です。
2. 「雑談」から始める
「ちょっと雑談なんですけど…」という一言で始めると、相手の構えが解けます。
「答えはいらないんで、聞いてもらえますか?」と伝えると、リラックスした“壁打ち空間”が生まれます。
3. 「歩きながら話す」
コーヒー片手に社内を歩きながら話すだけでも立派な壁打ちです。
体を動かすことで脳が柔らかくなり、アイデアが出やすくなるという科学的な効果もあります。
壁打ちが生み出す「考える文化」
著者が学部長を務める武蔵野大学アントレプレナーシップ学部では、授業の多くが壁打ち形式。
学生同士の対話の中から、自分の言葉や行動の軸を見つけ、実際に起業へとつなげているそうです。
壁打ちは単なる会話術ではなく、「考える文化」を育てるツール。
組織の中に壁打ちの文化が根づけば、クリエイティブな発想や主体的な行動が自然と生まれるのです。
まとめ:「壁打ち」は思考を外に出すトレーニング
『壁打ちは最強の思考術である』は、誰もが簡単に始められる“対話による思考法”の教科書です。
特別なスキルやツールは不要。
モヤモヤを抱えたまま話し始めることこそ、思考を動かす第一歩です。
話すことで考えが整理され、考えが整理されることで行動が生まれる。
行動がまた次の思考を呼ぶ――。
この循環をつくるための“最強の武器”が、まさに「壁打ち」なのです。
■ こんな人におすすめ
- アイデアを言語化するのが苦手
- 会議で思考が整理できない
- 新しい発想を生み出したい
- チームで創造的な対話をしたい
