からだの各部位

結髪動作に必要な肩・体幹の運動学と制限因子――理学療法士が押さえておきたい評価ポイント

結髪動作とは

結髪動作(髪を後頭部でまとめる動作)は、肩関節外転+外旋を中心とした複合運動であり、上肢だけでなく肩甲帯や体幹の協調運動が不可欠です。
臨床ではADLの評価や、肩疾患の機能評価において重要な観察項目となります。

結髪動作に必要な関節運動

結髪動作を遂行するためには、以下の運動が協調して働きます。

  1. 肩甲上腕関節(GH joint)
    • 外転
    • 外旋
  2. 肩甲骨(Scapula)
    • 内転(後方への引き寄せ)
    • 後傾
  3. 鎖骨(Clavicle)
    • 後退
    • 後方回旋
  4. 体幹(Trunk)
    • 胸椎の伸展

いずれかの運動が制限されれば、結髪動作全体が阻害されます。

各関節における制限因子

1. 肩甲上腕関節の外転・外旋

  • 関節包(特に前方・下方)
  • 大胸筋の短縮
  • 広背筋の柔軟性低下

2. 肩甲骨の内転・後傾

  • 小胸筋の短縮
  • 前鋸筋の柔軟性低下
  • 僧帽筋上部線維のアンバランス

3. 鎖骨の後退・後方回旋

  • 僧帽筋上部線維の柔軟性低下
  • 大胸筋の短縮
  • 胸郭前面の可動性低下

4. 体幹伸展

  • 胸椎伸展可動性の低下
  • 胸郭前面の硬さ
  • 腹直筋の柔軟性低下

臨床的インプリケーション

  • 肩関節のみを評価しても不十分:結髪動作は肩甲帯・鎖骨・体幹まで含めた全身運動。局所だけでなく連鎖を意識した評価が必要。
  • 制限因子は筋・関節だけでなく胸郭にも及ぶ:呼吸運動や胸椎可動性の評価を取り入れると効果的。
  • 動作観察が鍵:患者が「どこで代償しているか」を見極めることで、治療方針を立てやすくなる。

まとめ

結髪動作は、

  • 肩甲上腕関節の外転・外旋
  • 肩甲骨の内転・後傾
  • 鎖骨の後退・後方回旋
  • 体幹伸展

といった複数の運動の組み合わせで成り立ちます。
制限因子は関節包だけでなく、筋の柔軟性や胸郭可動性など多岐にわたるため、臨床では全体の協調性を視点にした評価・介入が求められます。

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taka
理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。