歩行中に見える膝蓋下脂肪体の働きとは?―変形性膝関節症における新しい視点
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Taka Knowledge Output
膝OA(変形性膝関節症)では、**膝蓋下脂肪体(infrapatellar fat pad: IFP)**の炎症・線維化が疼痛の一因とされています。
過去の研究で、IFPの硬さやヘモグロビン動態(血流反応)がOA患者では低下し、局所的な低酸素(hypoxia)状態が線維化を助長する可能性が示唆されていました。
しかし、その「低酸素化を引き起こす要因」は明確でなく、
ある研究で 膝関節伸展制限(ROM制限) がIFPの微小循環反応にどのように影響するかを検証されました。
| 指標 | 非制限群 | 伸展制限群 | 備考 |
|---|---|---|---|
| IFP硬さ(SWE) | IQE中に有意に増加 | 変化なし | 安静時は制限群の方が硬い |
| O₂Hb, cHb | IQE中に低下 → 終了後に上昇(反応性充血) | 変化なし | IFP酸素化の反応が欠如 |
| TOI | 運動後に上昇 | 変化なし | 血流回復が不十分 |
| IFP硬さと酸素化の変化 | 正の関連 | 無反応 | 機械的圧縮刺激の有無が関係 |
➡ 伸展制限のある膝では、IQEによるIFPの機械的変形と酸素化反応が起きにくい。
膝蓋下脂肪体は、膝伸展時に膝蓋腱・大腿骨・脛骨により圧縮→解放を繰り返す構造。
この圧力変化が**毛細血管の拍動(血流刺激)**を生み出す。
伸展制限があると、膝伸展位の力学的圧縮が不足し、
→ IFP内部の血流拍動が乏しい
→ 慢性的な局所低酸素
→ **線維化(fibrosis)**へ進行するリスク。
非制限群では、IQE中に一時的なO₂Hb・cHb低下(圧迫による虚血)→運動後に上昇(再灌流)。
この反応は健常な微小循環応答を反映。
一方、伸展制限群ではこの変化がみられず、
IFPの循環反応が抑制されている=線維化や硬化の進行状態が示唆される。
| フェーズ | 目標 | 具体的介入 |
|---|---|---|
| ① 初期(炎症・疼痛) | 圧迫軽減・滑走性確保 | 膝蓋骨・膝蓋腱下部の軽圧モビライゼーション、過伸展回避姿勢指導 |
| ② 可動域改善期 | 伸展終末域の再獲得 | 大腿四頭筋(特にVM)促通、ハムストリングス・腓腹筋ストレッチ、関節包前方の軽度リリース |
| ③ 微小循環改善 | IFPの酸素化促進 | 伸展位近くでの低負荷IQE(10秒×数セット)、痛みない範囲で拍動的収縮を繰り返す |
| ④ 動作再教育 | 機械的圧迫リズムの再構築 | 歩行中の立脚後期伸展を強調、殿筋・股伸展筋の協調運動を組み込む |
💡 重要ポイント:
「膝伸展可動域を確保した状態での大腿四頭筋収縮」こそが、
IFPの“酸素化ポンプ作用”を引き出す。
| 項目 | 結論 |
|---|---|
| 目的 | 膝OAにおける伸展制限がIFP血流反応に与える影響を検討 |
| 結果 | 伸展制限群はIFP硬さ・血流変化ともに乏しい |
| 解釈 | 伸展制限によりIFPの機械的刺激・酸素化が阻害され、線維化促進の可能性 |
| 臨床意義 | ROM回復→IFP酸素化→線維化予防、が治療連鎖の鍵 |