変形性膝関節症(KOA)の疫学と発症リスクを整理:臨床で押さえておきたい最新知見
変形性膝関節症(KOA)の疫学:世界で6億人を超える代表的な退行性関節疾患
変形性膝関節症(knee osteoarthritis:KOA)は、ロコモティブシンドロームの主要な原因として近年ますます注目されている疾患です。骨粗鬆症と比較しても有病者数が多く、膝関節機能障害や慢性疼痛の原因として日常生活に大きな影響を与えます。
2020年時点で40歳以上のKOAの患者数は、世界全体で約 6億5410万人 と推定されており、その広がりは国や地域によって異なります。
● 地域別のKOA有病率(40歳以上)
- アフリカ:21.0%
- アジア:19.2%
- 北米:15.8%
- ヨーロッパ:13.4%
特にアジア地域の有病率が高い点は、日本における動作特性(立ち座り、床上動作など)を考えると臨床的にも興味深い特徴です。
日本のKOA有病率:40歳以上女性の6割が該当する可能性
日本における変形性膝関節症の推定有病者数は 約2530万人 とされており、その内訳は以下の通りです。
- 男性:860万人
- 女性:1670万人
特に注目すべき点は、40歳以上の
- 男性の42%
- 女性の61.5%
がKOAを有する可能性があるという報告です。
女性に有病率が高いことは、加齢によるホルモン環境の変化、筋量・骨量の性差、生活動作の違いなど、多様な要因が関係していると考えられています。
KOAが生活機能に与える影響:ADL障害、歩行障害、要支援の主要原因に
KOAによって生じる以下の症状は、生活機能に直接的な支障をきたします。
- 慢性的な膝関節痛
- 関節可動域制限
- 筋力低下(特に大腿四頭筋)
- 歩行速度の低下
- 立ち上がりや階段昇降の困難
これらの機能低下は日常生活活動(ADL)の制限や移動能力の低下を引き起こし、ひいては社会参加の制限につながります。
令和4年の国民生活基礎調査では、KOAを含む関節疾患は
- 要支援1の原因の第1位
- 要支援2の原因の第2位
となっており、高齢者の自立度低下に強く関わる疾患であることが示されています。
KOAの発症に関わる危険因子:多因子性であり、予防介入の余地が大きい
KOAは慢性的な退行性関節疾患であり、複数の要因が複雑に関係しながら発症に至ります。代表的な危険因子は以下の通りです。
年齢
加齢はもっとも強力な危険因子であり、軟骨の変性・筋力低下・組織の回復力低下などが影響します。
性別
女性は男性に比べKOAの発症率が高く、特に 55歳以上の女性では重症化しやすい と報告されています。
肥満
体重が増加すると膝関節への荷重が増え、肥満者のKOA発症リスクは約3倍 に上昇します。
脂肪組織から分泌される炎症性サイトカインも病態進行に関与します。
膝関節の外傷歴
- ACL断裂後:KOA発症リスク 約4倍
- ACL+半月損傷の併発:約6倍
スポーツ障害後の長期フォローの重要性を示すデータです。
膝関節への反復負荷
- しゃがみ込み
- ひざまずき
- 重量物運搬
これらの動作は膝関節への圧迫ストレスが大きく、職業性KOAの危険因子として知られています。
その他の要因
- 筋力低下(特に大腿四頭筋)
- 関節弛緩性
- 遺伝的素因
- 高血圧
- メタボリックシンドローム
これらの因子は、関節の構造的負荷や全身的炎症状態を悪化させる可能性があります。
まとめ:KOAは世界的に有病者の多い疾患であり、生活機能に強く影響する
変形性膝関節症は世界規模で患者数が多く、日本では特に女性に多い疾患です。
膝関節の疼痛や機能低下はQOL低下と密接に関連しており、高齢者の要支援理由の上位を占めることから、社会的にも大きな影響を持ちます。
臨床においては、
- KOAの発症リスク
- 膝関節に加わる力学的負荷
- 生活背景や職業歴
- 過去の外傷や全身的要因
を丁寧に評価することで、より適切な介入や予防提案が可能になります。
