できるリーダーの基本をAIが解明!『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』を読んで学んだこと
「努力しても成果が出ないリーダー」に共通する落とし穴
「働きやすさを整えたのに定着率が上がらない」「研修をしても行動が変わらない」──そんな現場の悩みを、データとAIの力で徹底分析したのが本書『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』(越川慎司著/日経BP)です。
著者は、マイクロソフトの事業責任者を経てクロスリバーを設立し、800社以上の業務改善を支援してきた越川慎司氏。彼の講座では受講者の95%が行動を変えるという驚異の成果を出しています。
本書では、945人の一流マネジャーをAIが分析し、成果を出すリーダーが“どのように考え、話し、任せているのか”を明らかにしています。
心理的安全性がチームの原動力になる
最初のキーワードは「心理的安全性」です。
チームメンバーが安心して意見を言い合える状態こそが、主体性を引き出す土台となります。
著者はそのために、1on1で実践できる「5つの対話ルール」を提示します。
- 対話の前に、相手について2分間考える
- 最初の一言で相手を萎縮させない
- 感情を共有できる空気をつくる
- メンバーの行動と存在を承認する
- 質問ではなく「発問」で共に課題を考える
特に印象的なのは「発問」という考え方です。
単なる質問ではなく、リーダーとメンバーが一緒に課題を探り、共創する姿勢を意味します。これにより、チームは「やらされ感」から「自分たちで創り出す感覚」へと変わります。
「自走するチーム」は“放任”とは違う
本書では「自走するチーム」と「放任されたチーム」はまったく別物だと説きます。
自走するチームには次の3つの特徴があります。
- 方向性が共有されている(目的が明確)
- 権限と責任の範囲が定義されている
- 定期的なフィードバックがある
つまり「任せる」ことと「放り出す」ことは違うということです。
あるIT企業では、この仕組みを導入した結果、生産性が43%向上し、リーダー自身の働き方も改善したといいます。
自走するチームは、完璧を求めず、失敗を隠さず、助けを求めることが自然にできる文化を持っています。
そして「なぜ?」を問い続ける姿勢こそ、チームの成長を支えるエネルギーになるのです。
部下に“責任感”を持たせる3つの仕掛け
「責任感を育てたいのに、部下が受け身のまま」という悩みも多いもの。
本書によると、責任感は「自分事として考えられる環境」から生まれます。
- 行動がもたらす“結果”を具体的に伝える
- 役割の“意味”を伝える
- 小さな判断から段階的に任せる
このアプローチによって、若手社員の提案数が3倍になった事例や、研究部門で成果が42%向上した例も紹介されています。
「責任を持て」と言葉で伝えるよりも、「なぜその行動が大切なのか」を理解させる方が、何倍も効果的だということです。
“チャンク化”が部下の自律を促す
AI分析でわかったことのひとつに、「部下が動けない原因の67%は、リーダーの指示の出し方にある」というデータがあります。
できるリーダーは、タスクを小さなステップに分ける「チャンク化」をしていました。
たとえば「資料作成」を次のように分解します。
- 情報を集める
- ドキュメント化する
- 構成を組み立てる
- 図表を作る
- 最終チェックをする
こうして“見える化”されたタスクなら、部下は次に何をすべきかを理解しやすくなり、成功体験を積み重ねられます。
実際、導入企業の86%が「業務がスムーズになった」と回答したそうです。
「自由」とは枠の中で選ぶこと
最後に印象的だったのが、「真の自由とは、適切な枠組みの中での自由である」という言葉。
「好きにやって」と言われても、人は不安になります。
本書が紹介する“真の自由”を生む3つの要素は、
- 視座(なぜそれをやるのか)の共有
- 選択肢の共創
- コミットメント(約束)の明確化
です。
この3点を実践したチームでは、メンバーの主体性が向上し、コミュニケーションも活発化したという結果が出ています。
読後に残るメッセージ
本書を読んで心に残るのは、「部下を変える前に、リーダーが関わり方を変える」というメッセージです。
“自律的に動く部下”を育てるのは、魔法の言葉ではなく、丁寧な対話と仕組みづくり。
AIによる分析で可視化されたリーダーの行動原則は、どんな組織にも応用できます。
部下に任せきれずに悩むマネジャー、チームの雰囲気を良くしたいリーダーにこそ、強くおすすめしたい一冊です。
まとめ
『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』は、
「心理的安全性」「自走するチーム」「責任感」「自由の設計」――これらの要素を科学的に整理した、まさに“データで裏付けられたリーダーシップの教科書”です。
読めば必ず、「明日からやってみよう」と思えるヒントが見つかるはずです。
