「上に立つ者は人を見る目を養え」──新渡戸稲造『世渡りの道』に学ぶ、隠れた才能を見抜く力
「上に立つ者は人を見る目を養え」──新渡戸稲造のリーダー論
「人を使う人間は、真に惜しむべき人間とそうでない人間を見極める見識をもたなければならない。」
新渡戸稲造が『世渡りの道』で語ったこの一節は、リーダーや管理職にとって今なお響く言葉です。
現代の組織では、「成果を上げる人」「目立つ人」が注目されがちです。
しかし新渡戸は、「本当に惜しむべき人間──つまり真の人材──は目立たない」と言います。
「真に惜しい人」は、意外と目立たない
「真に惜しい人というのは、千人に数人というぐらいに少ない。」
優れた人材は決して多くありません。
しかも、そのような人ほど自己主張をせず、静かに仕事をしているものです。
新渡戸は続けます。
「カラスの群れの中のツルのように人目につくかというと、これがかえって目立たない。」
これは、派手さやアピールで目立つ人よりも、誠実に努力を重ねる人が見落とされやすいという警句です。
現代の企業でも、声の大きい人ばかりが評価され、黙々と支えている人が正当に評価されないという問題は少なくありません。
だからこそ、上に立つ者には「見る目」が求められるのです。
「派手さ」より「本質」を見る力を
新渡戸は、人の真価は外見や言葉ではなく、その人の心根と行動の積み重ねに表れると説いています。
自己宣伝が上手な人は注目を集めやすいですが、誠実に努力を重ねる人は、往々にして静かに埋もれていきます。
しかし、組織を本当に支えているのは、そのような人たちです。
派手さではなく「実直さ」。
言葉ではなく「行動の誠実さ」。
それを見抜けるのが、真のリーダーなのです。
リーダーが磨くべき「人を見る目」
では、「人を見る目」とは何でしょうか。
それは単なる印象や感情ではなく、人の本質を観察する洞察力です。
- 成果よりも「どのように取り組んでいるか」を見る
- 言葉よりも「行動の一貫性」を見る
- 評判よりも「他者への影響力(温かさ・信頼)」を見る
このような視点を持つことで、表面的な派手さに惑わされず、真の人材を見つけることができます。
新渡戸はまさに、この「見識」をリーダーの最大の資質として挙げています。
隠れた人材を見つけ、育てることが“上に立つ者”の務め
「人の上に立つ者は、こういう隠れた宝とその他大勢とを見分ける見識をもたなければならない。」
この一文には、単なる人材評価ではなく、育てる責任というメッセージも込められています。
優れた人材は、最初から輝いているとは限りません。
見抜かれ、信じられ、機会を与えられることで、その才能を開花させていくのです。
現代のリーダーに必要なのは、「声の大きい人を使う」ことではなく、「まだ光を当てられていない人を照らす」力です。
新渡戸が説いた「見識」とは、まさにそのような“人を信じて育てる眼”でした。
まとめ:リーダーは「見抜く力」と「信じる力」を持て
『世渡りの道』の教えは、時代を超えて普遍です。
上に立つ者は、
- 外見ではなく中身を見る
- 評判ではなく本質を見る
- 一時の成果ではなく誠実さを評価する
こうした視点を持ってこそ、真の意味で「人を活かすリーダー」になれるのです。
静かに努力を続ける人を見抜き、支え、信じること。
それが新渡戸稲造の説く「見識あるリーダー」の姿であり、
組織にも人生にも欠かせない“人を見る力”なのです。
