生命は“欠け”を補いながら進化する──アドラー心理学が教える「生きる力」の仕組み
「生命」は欠けを補いながら成長していく
私たちの身体は、驚くほど柔軟で、自己修復的にできています。
たとえば、ケガをすれば細胞が再生し、
臓器の一部が損なわれても、他の器官がその機能を補おうとします。
アドラー心理学は、この**「生命は欠けを補いながら継続する」**という生命の原理を、
心の働きにもあてはめて考えます。
つまり、精神もまた、欠けや不完全さを抱えながら“成長し続けようとする”力をもっているのです。
欠陥があるからこそ、他の力が育つ
医学の世界では、器官は特定の目的に向かって発達すると考えられています。
そして、もしその器官に欠陥があれば、他の器官が代わりに発達して補おうとします。
たとえば、
- 視覚が弱い人は、聴覚や嗅覚が敏感になる
- 体が不自由な人は、観察力や想像力が高まる
- 劣等感を抱えた人ほど、努力や工夫で能力を伸ばす
このように、「不足している部分」は新しい力を育てるきっかけになるのです。
アドラー心理学ではこれを「補償(compensation)」と呼びます。
心にも“補う力”がある
身体だけでなく、精神にも同じ性質があります。
心が傷ついたとき、私たちは無意識のうちに「どうすれば立ち直れるか」「何を学べるか」と模索します。
失敗や挫折の経験は、一見マイナスに見えても、
心が自らのバランスを取り戻そうとするプロセスでもあるのです。
たとえば、
- 失敗を経験した人は、他人の痛みに敏感になる
- 孤独を感じた人は、他者とのつながりを大切にする
- 恐れを知った人は、慎重さや思慮深さを身につける
心の中にも、欠けを補いながら成長する**“生命の働き”**が息づいています。
生命は「屈しない力」をもっている
アドラーは言います。
「生命の力は、外圧に対して何の抵抗もせずに屈することは絶対にない。」
どんなに苦しい状況にあっても、
人間の中には“生きようとする意志”が働いています。
それは、身体がケガを治そうとするように、
心もまた、傷を癒し、再び前に進もうとする力をもっているということです。
その回復力こそが「生命の本能」であり、
アドラー心理学が「人間には成長の方向性がある」と説く理由でもあります。
人の行動には、必ず“目標”がある
アドラー心理学では、すべての行動や感情には目的があると考えます。
怒りも、悲しみも、落ち込みも、実は**「理想の状態に近づこうとする過程」**なのです。
たとえば——
- 怒りは「理不尽を正したい」という願いの表れ。
- 不安は「安心を求める」ためのサイン。
- 悲しみは「大切なものを再確認する」プロセス。
私たちはいつでも、無意識のうちに「よりよい状態」を目指して行動しています。
それはまさに、生命が“継続”を目指して動いている姿そのものです。
まとめ:「欠け」を恐れず、「補う力」を信じる
人間は不完全な存在です。
しかし、その不完全さの中にこそ、成長と創造の可能性が宿っています。
- 欠けを認める
- そこから学ぶ
- そして、補おうと動く
それが、生命のリズムであり、人間の自然な発達のプロセスです。
アドラー心理学は、こうした生命の法則を“心”の領域にまで広げ、
私たちが「どんな状態でも前に進む力」をもっていることを教えてくれます。
生命は、今日も不足を抱えながら前へ進んでいます。
あなたの心も、その一部なのです。
