ローマの哲人セネカは『倫理書簡集』の中でこう語りました。
「この身に何が起きようとも、悲観せず、嫌な顔もせずに受け止めよう。課された税を喜んで支払うつもりだ。不満や恐怖を私たちに抱かせるものは、すべて人生の税金のようなものである。」
セネカのいう「人生の税」とは、私たちがどんな状況にあっても避けることのできない負担や代償のことです。
税金への不満とセネカの視点
現代の私たちにとって「税金」といえば、まず所得税や消費税を思い浮かべるでしょう。支払期になると、多くの人がつい愚痴をこぼします。
- 「なんでこんなに払わなきゃいけないんだ」
- 「稼いでも半分持っていかれる気がする」
しかしセネカはこう諭します。
- 税金は社会の基盤を支えるもの ― 道路、治安、教育など、私たちが当たり前に享受しているものは税によって支えられている。
- 誰も特別ではない ― 税金への不満は古代から続いているが、文句を言った人々もいずれ墓の下。逃げることはできない。
- 悪いことばかりではない ― 税を払うのは収入がある証拠。そもそも税も政府もなければ、インフラや秩序を自力で守らなければならない。
つまり「税」は社会生活のコストであり、それを受け入れることで安心や便利さが得られているのです。
人生に課される「見えない税」
セネカが本当に伝えたかったのは、人生そのものに課されるさまざまな税です。
- 旅行:待ち時間やトラブルという「時間の税」
- 有名人:噂やゴシップという「プライバシーの税」
- 人間関係:意見の相違や不満という「関係の税」
- 富の獲得:泥棒や妬みという「安全の税」
- 成功:ストレスや重責という「心の税」
どれも「嫌だ」と逃げても避けられるものではありません。
反発せず「支払う」姿勢が心を軽くする
大事なのは、これらを不運や理不尽とみなさないことです。
税のように「必ず支払うもの」と捉えれば、不満や苛立ちから解放されます。
- 旅での待ち時間も「移動の税」
- 成功に伴うストレスも「成果の税」
- 人間関係の摩擦も「愛や友情の税」
そう思えば、負担も自然と受け入れられるでしょう。
今日からできる「人生の税」の受け入れ方
- 起きる出来事を「税」として捉える
トラブルや負担を「避けられないコスト」と受け止める。 - 対価を意識する
その負担によって何を得ているかを考える(例:成功の裏のストレス=達成感の代償)。 - 不満をやめる
逃げられないものに文句を言っても無駄。潔く払うと決める。
まとめ ― 人生に「ただ」はない
セネカの言葉が示すのは、
人生のどんな恩恵にも必ず代償がついてくる
という現実です。
その「税」を嫌がらず支払うことで、むしろ人生の恵みを存分に味わえるのです。
あなたが今日直面している負担もまた、人生の税のひとつ。
支払うことで得ているものに目を向ければ、心はずっと軽くなるでしょう。