ライフスタイルは環境に適応するために作られる|アドラー心理学が語る性格形成の仕組み
「性格は生まれつき決まっているもの」――そう考えている人は少なくないかもしれません。
しかし心理学者アルフレッド・アドラーは、性格を「固定されたもの」ではなく「環境に適応するために作られたもの」と捉えました。
著書『人間知の心理学』の中で彼はこう述べています。
ライフスタイル(性格)とは、その人のもって生まれたものや環境に適応するために作り上げられたものだ。
だから対人関係や状況によって変わり得る。
つまり、ライフスタイルとは 生まれと環境の相互作用の中で形成され、柔軟に変化するもの なのです。
ライフスタイル=「その人なりの世界の捉え方」
アドラー心理学における「ライフスタイル」とは、単なる性格の特徴ではなく、その人が世界をどう捉え、どう関わるかというパターン を指します。
- 「困難は乗り越えられる」と考える人は、積極的に挑戦する
- 「どうせ失敗する」と思う人は、挑戦を避ける
- 「人は信頼できる」と思う人は、仲間をつくりやすい
- 「人は敵だ」と思う人は、孤立しやすい
このように、ライフスタイルは「現実をどう意味づけるか」によって形づくられています。
遺伝と環境、どちらが大きいのか
アドラーは、遺伝や体質そのものよりも「それをどう生かすか」「環境の中でどう適応するか」に重きを置きました。
- 同じ兄弟でも、親や先生、友人との関係の中で異なるライフスタイルをつくる
- 同じ能力を持っていても、ある人は協力的に使い、ある人は攻撃的に使う
つまり「生まれつき」だけでは説明できないのが性格なのです。
ライフスタイルは変わり得る
重要なのは、ライフスタイルは 固定されたものではなく、変えられるもの だという点です。
- 新しい人間関係に出会う
- 安心して挑戦できる環境に身を置く
- 勇気づけによって「できる」と信じられるようになる
こうした経験が積み重なると、人は以前とは違うライフスタイルを築くことができます。
子育てや教育でのポイント
子どもは環境に適応するためにライフスタイルを形づくります。
そのため、親や教師の関わり方は非常に大きな影響を与えます。
- 否定的な環境:叱責や比較ばかり → 「自分は無力だ」というライフスタイル
- 勇気づけの環境:努力や挑戦を認める → 「自分には力がある」というライフスタイル
つまり、子どもの性格を「生まれつき」と決めつけるのではなく、関わり方次第で育ち方は変わる と理解することが重要です。
大人の自己理解にも役立つ
ライフスタイルの概念は大人にも有効です。
「自分はこういう性格だから仕方ない」と思っている行動パターンも、実は過去の環境に適応するために選んだものかもしれません。
- 「人に頼れない性格」=昔、助けを求めても拒まれた経験から形成されたもの
- 「挑戦できない性格」=失敗を強く責められた過去からの影響
これに気づけば、「今の自分に合った新しいライフスタイル」を選び直すことができます。
まとめ
アドラー心理学では、ライフスタイル(性格)は「生まれつき」ではなく「環境に適応するために作られたもの」と捉えます。
そしてそれは対人関係や状況に応じて変わり得る柔軟なものです。
子育てや教育の場では、勇気づけによって「健全なライフスタイル」を育てることができます。
大人もまた、自分の過去を見直すことで、新しいライフスタイルを築き直すことが可能です。
性格は運命ではなく、選び直すことができる。
この視点こそ、アドラー心理学が私たちに与えてくれる大きな希望なのです。
