「極端に生きるな」―不条理な世の中で心を壊さないためのバランスの知恵

極端に生きるな ― 不条理な世界で心を守るために

「なぜ正しい人が早く死に、悪人が長生きするのか。」
誰もが一度は抱いたことのある疑問です。
この問いに、古代の知恵者・コヘレトも心を悩ませました。

そして彼は、深い観察の末にこう語ります。

「正しすぎてもいけない。愚かすぎてもいけない。
賢すぎても、悪すぎてもいけない。」

この言葉こそ、**「極端に生きるな」**という人生の指針です。

1. 不条理な現実を“理解しようとしすぎない”

世の中には、どうしても納得できない出来事があります。
誠実に生きている人が報われず、
不正を働いた人が成功しているように見えることもあります。

そんなとき、人は「なぜ？」と考えすぎてしまう。
しかし、すべてを理解しようとすること自体が、心を疲弊させるのです。

人生には、人の知恵では解けない謎がある。
だからこそ、「わからないものは、わからないままにしておく勇気」が必要なのです。

2. 「正しすぎる人」が陥る落とし穴

“正義感”は素晴らしいものです。
しかし、それが行き過ぎると、人を追い詰め、時に自分自身を壊してしまいます。

・「絶対に間違ってはいけない」
・「すべての不条理を正さなければならない」

このような完璧主義的な思考は、
理想と現実のギャップに苦しみ、心を疲れさせます。

正義は必要ですが、人間には限界があるという謙虚さを忘れてはいけません。
「正しすぎる人」ほど、壊れやすいのです。

3. 「愚かすぎる人」が失うもの

一方で、世の中の理不尽に疲れ果て、
「どうせ何をしても無駄だ」「考えるだけ無駄」と投げ出してしまう人もいます。

これは、もう一つの極端――**「愚かすぎる生き方」**です。

考えることをやめ、努力を放棄し、善悪の区別を曖昧にしてしまえば、
人生の方向性を失い、自暴自棄になっていきます。

「正しすぎてもいけない」「愚かすぎてもいけない」
この両極端のどちらにも陥らないことが、健全な心を保つ秘訣なのです。

4. 「知りすぎる」ことも危険である

コヘレトはさらに警告します。

「あまりにも知恵がありすぎてもいけない。」

現代社会では、情報が溢れ、誰もが“知りすぎる”時代です。
ニュース、SNS、ネット検索――私たちは一日中、無数の情報にさらされています。

しかし、すべてを理解しようとすると、心は処理しきれなくなる。

世界の不条理や人間の悪意を、すべて理解しようとするほど、
心は重く、暗くなっていきます。

時には、「知らないままでいる自由」を持つことも、
精神の健康を保つためには必要なのです。

5. バランスを保つための３つの知恵

コヘレトの教えを現代に生かすなら、
極端に傾かないための３つの心がけが役立ちます。

1. 「白黒」ではなく「グレー」を受け入れる
   　世の中は単純な善悪では割り切れません。
   　「どちらもあり得る」という視点が、柔軟さを育てます。
2. 完璧を求めず、“ほどほど”を許す
   　人間も世界も不完全。
   　完璧さを求めず、「ここまでで十分」と言える心を持ちましょう。
3. 考えすぎたら、「委ねる」
   　どうしても解決できない問題は、
   　「自分の理解を超えたこと」として手放す。
   　それは逃げではなく、成熟した判断です。

6. 神を信頼する者は、極端に走らない

コヘレトは最後にこう言います。

「神を知る者は、どちらの極端にもはまらない。」

すべてを理解しようとせず、
すべてをコントロールしようともしない。
ただ、「人には限界がある」ことを受け入れる謙虚さを持つ。

その姿勢が、心に穏やかな安らぎをもたらします。

何もかもを“自分の力でどうにかしよう”とするから苦しくなるのです。
信頼とは、「わからないことを、わからないままに委ねる勇気」なのです。

まとめ：極端ではなく、穏やかに生きる

• 不条理な現実は、理解しきれなくて当然
• 正しすぎても、愚かすぎてもいけない
• 知りすぎることも心を壊す
• 完璧よりも「ほどほど」を大切に
• 手放すことで、安らぎが生まれる

「極端に生きるな」
それは、世界の不条理の中で心を守るための知恵です。

正義も、知恵も、追いすぎれば毒になる。
だからこそ、人は「ちょうどよく」生きることが大切なのです。

わからないことは、わからないままでいい。
その静かな受け入れの中にこそ、
真の自由と安らぎが宿るのです。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。