たまに会う友人は「冷凍保存」できるが、家族は「生もの」だ。放置すれば腐る理由。
「学生時代の友人とは、数年ぶりに会ってもすぐに意気投合できる」 「それなのに、毎日顔を合わせている妻(夫)とは、なぜか会話が弾まないし、すぐ喧嘩になる」
こんな不思議な現象に悩んだことはありませんか? 毎日一緒にいるのだから、一番仲が良いはずだと思いがちですが、実はその**「近さ」こそが落とし穴**なのです。
この記事では、『7つの習慣』の著者コヴィー博士が指摘する、継続的な人間関係における「信頼残高の減り方」について解説します。 理学療法士として筋肉の仕組みを見ていても同じです。たまに使う筋肉よりも、毎日姿勢を支えている筋肉の方が、疲労がたまりやすく、こまめなケア(メンテナンス)が必要なのです。
結論をお伝えします。身近な人との関係は「放っておくと勝手に目減りする資産」です。今日から「再投資」を始めなければ、いずれ破産してしまいます。
身近な関係には「維持費」がかかる
私たちは、「一度仲良くなれば、その信頼はずっと続く」と勘違いしがちです。しかし、結婚生活や職場のような継続的な関係においては、そうはいきません。
コヴィー博士はこう述べています。
「結婚生活のように長く続く人間関係であればなおさら、継続的な信頼口座の預け入れをしておかなければならない。お互い期待感を持ち続けるため、古い預け入れ残高はどんどん減っていくからだ」
期待感という名の「自動引き落とし」
なぜ、何もしなくても信頼が減るのでしょうか? それは、近い関係には常に「期待」があるからです。
- 「夫(妻)なら、これくらいやってくれて当然」
- 「上司なら、気づいてくれて当然」
この「やってくれて当然」という期待は、毎月の固定費(家賃や光熱費)のように、あなたの信頼口座から自動的に信頼を引き落としていきます。 だから、何もしない(預け入れをしない)でいると、ただ普通に生活しているだけで、いつの間にか残高不足(不仲)になってしまうのです。
友人は「冷凍保存」、家族は「生鮮食品」
一方で、たまにしか会わない友人関係は楽ですよね。
「長年会っていなかった学生時代の友人にばったり出会ったりすると、昔と変わりなく話ができる。それは以前の貯えがそっくりそのまま残っているからだ」
たまに会う友人には、「毎日ゴミ捨てしてほしい」とか「稼いできてほしい」といった生活上の期待(引き落とし)がありません。だから、10年前の信頼残高がそのまま冷凍保存されているのです。
しかし、家族や同僚は「生鮮食品」です。
「しかし、しょっちゅう顔を合わせる人とは、まめに残高をチェックして預け入れをしなければならない」
毎日鮮度を保つための努力(ケア)をしなければ、すぐに傷んでしまいます。「釣った魚に餌をやらない」という言葉がありますが、餌をやらないと魚は死んでしまうのです。
1日1回、100円の「預け入れ」をしよう
では、どうすればいいのでしょうか。 答えはシンプルです。自動引き落としの額を上回るくらい、毎日コツコツと「預け入れ」をすることです。
豪華なディナーや高価なプレゼント(100万円の預け入れ)である必要はありません。毎日の「100円」でいいのです。
- 目を見て「おはよう」と言う
- 「ありがとう」と言葉にする
- 相手の話をスマホを置いて聴く
- 小さな親切をする(お茶を入れる、など)
理学療法でも、週に1回の激しいトレーニングより、毎日のストレッチの方が体を健康に保ちます。人間関係も、イベントごとのサプライズより、日常の小さな親切の方が、圧倒的に信頼を積み上げるのです。
まとめ・アクションプラン
今回の記事のポイントは以下の3点です。
- 身近な人との関係には「期待」という維持費がかかり、信頼残高は自然に減っていく。
- たまに会う友人は「過去の貯金」で付き合えるが、家族は「日々の入金」が必要。
- 特別なことではなく、毎日の挨拶や感謝といった「小さな預け入れ」が関係を救う。
「最近うまくいかないな」と思ったら、それは相手が変わってしまったのではなく、単にあなたの口座が「残高不足」になっているサインかもしれません。
Next Action:今日、一つだけ「感謝」を伝える
今日、家に帰ったら(あるいは職場で)、パートナーや身近な人に**「いつも○○してくれてありがとう」**と伝えてみてください。 「え、急に何?」と言われるかもしれませんが、それが口座へのチャリンという入金の音です。
身近な人との関係構築について、さらに具体的な実践法を知りたい方は、**『7つの習慣』や、家族関係に特化した『7つの習慣 ファミリー』**がおすすめです。 関係が破綻して「不渡り」を出す前に、ぜひ手にとって読んでみてください。
