リハビリ関連

正常膝における内側半月板(MM)のエコー像と動態|MCL・半膜様筋腱との連動を理解する

taka
スポンサーリンク

内側半月板(MM)のエコー観察が示す膝の動態理解

超音波画像(エコー)は、膝関節の軟部組織をリアルタイムに観察できる優れたツールです。特に、内側半月板(medial meniscus;MM)と周辺組織の動態を可視化することで、膝内側の構造的連動性を理解する助けとなります。

正常膝を観察すると、大腿骨遠位端と脛骨近位端の辺縁部の高さは、半月板外縁の高さとほぼ一致しています(C23)。
この位置関係は、MMが関節内で安定した位置を保ちながら荷重を分散していることを示しており、解剖学的にも重要な基準点といえます。


半月板外縁と接する主要組織:MCLと半膜様筋腱

半月板外縁を前方から後方へ3つのレベル(前節・中節・後節)に分けて観察すると、各部位で異なる軟部組織と接触・連続していることが確認できます。

  1. 前節(anterior horn)・中節(body)レベル
     → 内側副靱帯(MCL:Medial Collateral Ligament)と接触し、線維的に癒合。
  2. 後節(posterior horn)レベル
     → 半膜様筋腱(Semimembranosus tendon)と接触。

この構造的連続性により、MCLおよび半膜様筋腱が半月板の動きに影響を与えることになります。
つまり、MMは単なる受動的な“クッション”ではなく、動的に位置を変化させる組織であるということです。


膝関節運動に伴う内側半月板(MM)の移動メカニズム

MMは、膝の屈伸に応じて前後方向に滑走します。これは、MCLおよび半膜様筋腱との線維的連続性により発生する、力学的連動運動です。

  • 膝伸展時
     MCL(浅層線維)が緊張し、MMを前方に牽引します。
     → 結果として、半月板は前方移動し、関節面間での荷重分散をサポート。
  • 膝屈曲時
     半膜様筋腱の収縮により、MMが後方へ牽引されます。
     → 半月板後節が脛骨内側後方へ移動し、関節内の適合性を維持。

このように、MMはMCLと半膜様筋腱の動的バランスの中で前後移動しており、膝屈伸運動の円滑さを支える重要な構造的要素です。


超音波で観察されるMMの正常像

超音波観察における正常なMMは、三角形状の低エコー領域として描出されます。
外縁部ではMCLとの境界が曖昧で、これは両者が線維的に癒合しているためです。
また、後節レベルでは、半膜様筋腱のエコー像と重なりをもって描出されることが多く、筋腱と半月板の一体的な動きを観察することが可能です。

臨床的に重要なのは、これらの関係が左右差や屈伸角度によって変化するという点です。
特に、膝伸展位では半月板外縁がより前方に位置し、屈曲位では後節が深部に沈むように描出されます。
この動態を把握しておくと、半月板損傷や滑走障害の評価がより正確に行えます。


臨床応用:エコーを用いた動的評価のポイント

  1. MCLとMMの連続性の確認
     膝伸展位で観察し、半月板外縁とMCLが一体的に動くかを確認。
     滑走制限がある場合、MCL付着部炎や線維癒着を疑う。
  2. 半膜様筋腱との動的連動
     膝を軽度屈曲させ、半膜様筋を自動収縮または抵抗運動させる。
     このとき、MM後節の滑動が遅延・制限されていれば、半月板後角の拘縮や線維化の可能性あり。
  3. 屈伸角度による位置変化の観察
     伸展位と屈曲位での半月板位置を比較し、左右差や前後移動距離を確認。
     滑走障害があると、半月板が過剰に前方または後方へ偏位する。
  4. 滑液包や関節包との関係
     後節周囲に滑液貯留(ベーカー嚢胞など)がある場合、半膜様筋腱との動的干渉を引き起こすこともある。

まとめ:内側半月板は「動く組織」である

正常膝における内側半月板(MM)は、静的なクッションではなく、MCLと半膜様筋腱の動的連動の中で前後に移動する可動構造です。
エコー観察によってこの動きをリアルタイムで捉えることができれば、

  • 半月板の滑走障害
  • MCL・半膜様筋腱との癒着
  • 膝内側痛の動的要因

といった臨床的問題を、より精度高く評価することができます。

膝の屈伸運動において、半月板がいかに関節包・靱帯・筋腱と協調して動くかを理解することは、
理学療法士にとって、評価・治療の質を高める大きな武器となるでしょう。

スポンサーリンク
ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
スポンサーリンク
記事URLをコピーしました