世界が警戒するMMT批判の正体
MMTに向けられた厳しい視線
国内外で注目を浴びるMMTだが、その評価は必ずしも肯定的ではない。日本のSNSを眺めても、「トンデモ理論」や「暴論」といった言葉が並び、海外でも似たような扱いを受けている。
急速に知名度が高まった理論に対し、専門家たちは慎重どころか強い警戒心を示している。MMTをめぐる論争が世界的な“嵐”へと発展した背景には、従来の財政観や経済理論と大きく異なる点があるといえる。
「ブードゥー経済学」と呼ばれる理由
批判の先頭に立つ人物の一人が、米国の元財務長官ローレンス・サマーズである。彼はMMTを「ブードゥー経済学」と呼び、科学的根拠のない非現実的な理論だと断じた。
ブードゥーとは、ハイチを発祥とする民間信仰で、儀式による予言やゾンビ化といった超常的なイメージを含む。この比喩が示すのは、MMTが“魔法のように都合よく財政問題を解決する理論だ”という皮肉であり、経済学としての信頼性に疑念を向けたものと理解できる。
FRB歴代議長による強い否定
批判的な見解は米国の中央銀行であるFRBにも広がっている。現議長のジェローム・パウエルは2019年の議会証言で、「自国通貨で借金できる国の赤字は問題にならない」というMMTの考え方を「完全に誤りだ」と断言した。米国の債務がGDPを上回るペースで増えている現状を指摘し、歳出削減と歳入拡大の必要性を強調したのである。
さらに前議長のイエレンは「MMTはハイパーインフレを招く非常に誤った理論」と述べ、提唱者がインフレの仕組みを理解していないと厳しく批判した。アラン・グリーンスパンもMMTが実施されれば為替市場の混乱は避けられないと警鐘を鳴らしている。
これらの発言は、金融政策の中心にいる人物たちがMMTを現実的な政策と見なしていないことを示している。
日本でも続く否定的な反応
日本でも主要な政策担当者はMMTに慎重だ。参議院決算委員会で西田議員が政府見解を求めた際、麻生財務大臣は「極端な議論は財政規律を緩め、日本を実験場にするような考え方は取らない」と明言した。
また黒田日銀総裁も「債務残高を考慮しないというMMTの主張は極端で受け入れがたい」と否定的な姿勢を示した。
いずれの発言からも、財政健全化を重視する現行の政策フレームでは、MMTは現実的な選択肢として受け止められていないことがうかがえる。
なぜここまで反発が強いのか
MMTへの批判は、単なる理論の違いではなく、国家財政の根本的な考え方を揺さぶる点にある。赤字を恐れず財政を拡大するという発想は、従来の財政規律を崩しかねないという懸念と結びつきやすい。
そのため、中央銀行や財務当局といった保守的な立場の組織ほど、MMTを危険視する傾向が強いのである。
MMTをめぐる論争は今後も続くが、賛否双方の議論を冷静に見つめることが必要だといえる。
