政治・経済

『お金の担保とは何か――信用の正体を読み解く』

taka

金本位制の誤解を超えて

「お金の担保は金である」と信じる人はいまだに少なくない。だが、現代の通貨は金を裏づけにしてはいない。金は有限の資源であり、それに依存すれば経済全体は深刻なデフレーションに陥るだろう。では、今のお金は何を担保に成り立っているのか――。

お金は債務と債権の記録

お金とは単なる紙やデータではなく、「誰かの債務であり、同時に誰かの債権」である。現金紙幣は「保有者の債権」であり、「日本銀行の負債」だ。つまり、お金そのものが「貸し借りの記録」なのである。この仕組みを理解すれば、「お金を貸す」という表現の奇妙さに気づくはずだ。

お金の条件と担保の本質

お金として成立するためには、次の四条件が必要となる。
「債務と債権の記録であること」「通貨単位が明確であること」「譲渡性があること」そして「債務不履行の可能性が低いこと」。
個人や企業の場合、債務の返済は所得に依存するため、信用が担保の源泉となる。銀行預金が安心して保有されるのは、預金の背後に巨大なバランスシート――膨大な資産と負債――が存在するからだ。数百億円規模の銀行が一万円の債務を不履行にすることは、まず考えられない。私たちはその「規模」を信用しているにすぎない。

日銀券の担保と「法貨」の力

では、日本銀行券――現金紙幣の担保は何か。
答えは「国債」である。日銀は国債などの債券を購入する際、その代金として日本円を発行する。すなわち、日銀の発行するお金の裏側には、必ず国債という資産が存在している。
加えて、日銀券は法律によって「法貨」として定められている。これは「国内で無制限に通用する通貨」であることを意味し、債務不履行の可能性が事実上ゼロであることを保証している。日本銀行券の信用は、国の法律と国債を根拠として支えられているのだ。

銀行と日銀の違い

銀行が発行するお金――つまり預金の担保は、バランスシート上の貸付金や資産規模である。一方、日本銀行の担保は、法的権限と国債の保有にある。どちらも「信用」という言葉で片づけられがちだが、その実態は数字と制度に裏づけられた構造だ。

お金の担保の多層構造

個人は所得を担保にお金を発行し、銀行は資産規模を担保に預金を創造し、中央銀行は法律と国債を担保に通貨を発行する。そして日本政府は、貨幣――硬貨――を発行している。この「貨幣の担保」こそ、経済の本質を理解する最後の鍵である。お金とは、単なる交換の道具ではなく、社会全体が築いた信頼と制度の総体なのだ。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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