『財源神話を揺るがす国会質疑の核心』

現代日本の財政議論を揺るがす質疑

今回の臨時国会で、国民民主党・浜野議員が投げかけた問いは、財政や通貨に対する私たちの常識を根底から見直させるものであった。高市首相、片山財務大臣、そして日本銀行の上田総裁を相手に行われたやり取りは、一見すると難解に聞こえるが、実は「お金とは何か」という極めて本質的な部分に触れている。
これまで政府や財務省が示してきた説明と、実際の通貨の仕組みは必ずしも一致してこなかった。その矛盾が丁寧に掘り下げられ、結果として財政神話が崩れていく――その過程がこの質疑に凝縮されているといえる。

お金の正体は「資産」と「負債」

最初の論点は、通貨の本質である。上田総裁は「現金通貨や預金通貨は、家計や企業にとっては資産であり、銀行にとっては負債である」と明確に述べた。
一見シンプルなこの指摘は、通貨の正体を一気に浮かび上がらせる。私たちが持つお金は、銀行や中央銀行のバランスシート上では「負債」として位置づけられており、それが社会に流通しているという構造である。

銀行は“お金を貸している”のではなく“作っている”

続く議論では、銀行の貸出しが「信用創造」であることが再確認された。
銀行は預金を誰かに回しているわけではなく、貸出しを決定した瞬間に預金が新たに生まれる。民間の資金需要が存在すれば、その分だけ新しい日本円が創造される仕組みである。
ここで初めて、多くの人が誤解してきた「預金を誰かに回している」というイメージが崩れ落ちる。

国債と貨幣創造の関係

浜野議員はさらに踏み込み、政府が国債を発行した際に何が起きているのかを確認した。
銀行が国債を購入しても、その段階では世の中のお金の総量（マネーストック）は増えない。増加が起こるのは、政府がその資金を実際に使った瞬間である。この点を上田総裁も明確に認め、国債発行とは「政府が支出する際に新たな預金が生まれるプロセス」であると説明した。
つまり政府の赤字は、民間の黒字として記録される構造に他ならない。

財源論の終焉とこれからの課題

財務大臣も「お金は想像されるのが実態である」と述べ、税が“財源”であるという通念に揺らぎが生まれた。
税は政府支出の前提ではなく、あくまで別の役割を担う。財政破綻論が成立しない理由もここにある。
浜野議員は最終的に、財源論に縛られない積極財政こそが、需要と供給の双方を高め、国民生活を向上させる道だと提案した。しかし首相は依然として旧来の枠組みを前提にした姿勢を崩しておらず、議論は依然として大きな隔たりを残しているといえる。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。