ストレッチングの基本分類
ストレッチングは、大きく以下の2種類に分けられます。
- 動的ストレッチング(ダイナミックストレッチ)
身体を動かしながら反動を使って筋を伸ばす方法。ラジオ体操が代表例です。 - 静的ストレッチング(スタティックストレッチ)
反動を用いず、一定の伸張位で静止する方法。ゆっくり伸ばし続けることが特徴です。
ストレッチングの主な効果
ストレッチングには以下の3つの効果が報告されています。
- 筋長増大(筋節の増加)
- 筋緊張低下(Ⅰb抑制による効果)
- 運動パフォーマンスの向上
特に静的ストレッチングは①②の効果が強く、リハビリ臨床で多用されています。
静的ストレッチングと競技前の注意点
かつては「競技前にストレッチをすれば傷害予防になる」と考えられてきました。しかし近年の研究では、静的ストレッチ後に筋出力が一時的に低下することが報告されています。
そのため、競技や激しい運動の直前には静的ストレッチは推奨されません。代わりに 動的ストレッチング を取り入れることで、筋緊張低下が少なく、運動パフォーマンスや傷害予防効果が期待できます。
👉 臨床応用ポイント
- 運動直前:動的ストレッチングで準備
- 運動後・リハビリ中:静的ストレッチングで柔軟性改善・筋緊張低下
筋長増大のメカニズム
静的ストレッチングが筋長を増大させるメカニズムは「筋節の増加」にあります。
- 筋節(サルコメア):筋肉が伸びるための最小単位。筋節が増えることで、筋全体の伸張性が向上する。
- ターゲット部位:筋腱移行部を集中的に伸張することで、筋節の増加を促せる。
実践的工夫
- 等尺性収縮を併用
ストレッチング中に軽い等尺性収縮を行うと、筋腱移行部に効果的な刺激が加わり、筋節増加を促進できます。 - 弱負荷×長時間
研究では「弱い負荷を長時間持続するストレッチ」が最も筋節増加に有効とされています。短時間の強い伸張よりも、持続的かつ低負荷のストレッチが望ましいのです。
筋緊張低下とⅠb抑制
静的ストレッチングには「Ⅰb抑制」による筋緊張低下の効果があります。
- Ⅰb抑制:腱受容器(ゴルジ腱器官)からの入力により、α運動ニューロンの活動が抑制される現象。
- 結果:ストレッチング後には筋収縮の抑制が働き、過緊張が低下する。
👉 臨床では特に拘縮のある患者や筋緊張が高い患者に有効です。
運動パフォーマンスの向上
動的ストレッチングは筋温を上げ、関節可動域を拡大し、神経系の活動を高めることでパフォーマンス向上に寄与します。競技場面だけでなく、日常動作の改善や転倒予防にも応用可能です。
まとめ
- ストレッチングは大きく動的・静的に分類される
- 静的ストレッチング → 筋長増大・筋緊張低下に有効。弱負荷で長時間がベスト。
- 動的ストレッチング → 運動前の準備に適し、パフォーマンス向上や傷害予防に寄与。
- 臨床では「いつ・誰に・どの方法を用いるか」を明確にし、目的に応じて選択することが重要。
ストレッチングは「とりあえず伸ばす」ものではなく、科学的な背景を理解して実施することで効果が最大化されます。臨床でのアプローチにぜひ役立ててください。