叱る・罰するは逆効果?|アドラー心理学が教える子どもを伸ばす接し方
子育てや教育の場で、子どもが問題行動をしたとき、つい「叱る」「罰を与える」「説教する」といった方法に頼ってしまうことがあります。
しかし心理学者アルフレッド・アドラーは、著書『生きるために大切なこと』の中で、罰や叱責は子どもに良い影響を与えないと明確に述べています。
では、なぜ罰や叱る方法は子どもを変えられないのでしょうか。
子どもは「なぜ叱られたのか」を理解できない
大人からすれば「これは悪いことだから叱っている」と思っていても、子ども自身がその理由を理解できなければ意味がありません。
「なぜ叱られたのか」「どこを直せばいいのか」が分からなければ、子どもは本質的な学びを得ることなく、ただ次のような反応を見せるだけです。
- ずる賢くなる(叱られないようにごまかす)
- 臆病になる(挑戦を避けるようになる)
つまり、表面的には従うように見えても、子どもの成長にはつながらないのです。
ライフスタイルの原型は罰では変わらない
アドラー心理学でいう「ライフスタイル」とは、その人の物事の意味づけや受け取り方のクセのことです。
子どもはすでに「自分はこういう存在」「世界はこういう場所」という認識のフィルターを持っています。そのフィルターを通して「叱られた」「罰を受けた」という経験を解釈するのです。
たとえば、ある子は「どうせ自分はダメなんだ」と受け取り、別の子は「バレなければいい」と学ぶかもしれません。
同じ叱責でも、解釈は子どもによって異なり、本来変えるべきライフスタイルそのものは変わらないのです。
罰や説教が生む悪循環
罰や説教を繰り返すと、次のような悪循環に陥ります。
- 子どもが理由を理解しないまま従う
- 内面が変わらないので、同じ行動を繰り返す
- 大人はさらに強い叱責や罰を与える
- 子どもは臆病か反抗的になる
結果として、大人も子どもも疲弊し、信頼関係が壊れてしまうことさえあります。
代わりにできること:ライフスタイルを理解する
では、どうすれば子どもは前向きに成長できるのでしょうか。アドラーは「子どものライフスタイルを理解すること」が第一歩だと述べています。
つまり、「なぜその行動を選んだのか」「子どもの目に世界はどう映っているのか」を理解することが大切なのです。
そのうえでできることは、次のような関わりです。
- 行動の背景を尋ねる
「どうしてそうしたの?」と問いかけ、子どもの考えを聞く。 - 行動の意味を共有する
「こういう結果になるから、この方法はよくない」と説明する。 - 選択肢を一緒に考える
「じゃあ、次はどうしたらいいと思う?」と子どもに考えさせる。
これらは罰や説教よりも時間はかかりますが、子どもが自分のライフスタイルを見直し、自ら変わろうとするきっかけをつくります。
まとめ
罰や叱責は、子どものライフスタイルの根本的な変化にはつながりません。むしろ、ずる賢さや臆病さを助長するだけです。
必要なのは、「この子はどう世界を見ているのか」という理解を深め、説明と対話を通じて子ども自身が考える機会を与えることです。
大人が焦らず向き合うことで、子どもは自分なりに学び、健全な成長へと進むことができます。
