本当の「高級な感情」とは?幸田露伴『努力論』に学ぶ、人間としての品格の磨き方
幸田露伴が説く「高級な感情」とは
知識や才能ではなく、「感情の質」こそが人間の価値を決める。
そんな深い洞察を残したのが、明治の文豪・幸田露伴です。
『努力論』の第117章で彼は、「高級な感情とは何か」を、誰にでもわかる身近な例で説明しています。
貧しい老婦人が転んだときの反応でわかる「感情の格」
露伴は、ある雨上がりの情景を描きます。
泥道で一人の貧しい老婦人が転倒したとき、周囲の人々はそれぞれ異なる反応を示します。
- A:口を開けて笑う
- B:眉をひそめる
- C:気の毒に思う
- D:冷たく無関心
- E:バカにするような表情を浮かべる
この中で、露伴は「気の毒に思う感情が最も高級な感情である」と語ります。
誰かの不幸を笑うことは、感情の低さを示すもの。
反対に、相手を思いやる感情は、心の品格が反映された“高級な感情”なのです。
外見や地位で感情が変わるのは、未熟な証拠
露伴は続けて、興味深い問いを投げかけます。
もし転んだのが「貧しい老婦人」ではなく、「お嬢様風の美少女」だったら、人々の感情はどうなるだろう?
すると多くの人は、同じ「転倒」という出来事であっても、反応が変わるでしょう。
つまり、相手の外見や社会的な地位によって、感情のレベルが変わってしまうのです。
しかし、露伴は言います。
「本当に高級な感情を持つ人であれば、どんな相手であっても同じように気の毒に思うはずだ」と。
高級な感情とは、相手の見た目や立場に左右されない「普遍的な思いやり」のことなのです。
「高級な感情」は、人としての品格をつくる
現代社会でも、この考え方は深く共感を呼びます。
SNSの世界では、他人の失敗を笑ったり、見た目や肩書で人を評価したりする光景が日常化しています。
しかし、幸田露伴の言葉を借りるなら、それは**“低級な感情”**の表れです。
本当に成熟した人は、どんな人にも尊厳を見いだし、思いやりを持てる人。
「高級な感情」とは、
- 相手を外見で判断せず、
- 状況に関係なく、
- 一貫して温かいまなざしを向けられる心
このような心の在り方を指しています。
感情の“格”を高めるための3つの実践
高級な感情は、知識のように一朝一夕で身につくものではありません。
日々の暮らしの中で、少しずつ「感じ方」を磨いていくことが大切です。
1. 立場の違う人にこそ丁寧に接する
店員、配達員、清掃員など、日常で出会う人に対しても礼儀正しく。
人を区別しない態度が、感情の格を上げる第一歩です。
2. 「もし自分がその立場だったら」と考える
他人の失敗や苦境を見たとき、笑う前に「自分ならどう感じるか」を想像してみましょう。
共感力は感情の成熟を育てます。
3. 喜びや悲しみを丁寧に味わう
感情を無視せず、感じる力を大切にすること。
心を鈍らせずに生きることが、品格ある感情を育てる土台になります。
まとめ:「高級な感情」は誰にでも育てられる
幸田露伴が説く「高級な感情」とは、知識や才能よりも根源的な人間の力です。
それは、「どんな相手にも等しく思いやりを持てる心」。
人を見た目や地位で判断するのではなく、
“人間として” 相手を尊重できる心のレベルが高級な感情の証です。
私たちが日々の中で、少しずつその感情を育てていくことこそ、
人間としての真の「努力」なのかもしれません。
