劣等コンプレックスも優越コンプレックスも「非建設的な感情」──アドラー心理学が教える心のバランスの整え方
「劣等コンプレックス」と「優越コンプレックス」の共通点
一見、まったく逆の感情に見える「劣等コンプレックス」と「優越コンプレックス」。
一方は“自分を下げすぎる”、もう一方は“自分を高く見せすぎる”。
しかし、アドラー心理学の視点では、この二つには共通する本質があります。
それは、どちらも**人生において「非建設的な感情」**だということです。
どちらも「成長を止めてしまう」感情
アドラーは、人間の行動や感情の多くは「目的」に向かっていると考えました。
健全な感情であれば、私たちを前へと進め、他者とのつながりを深めてくれます。
ところが、劣等コンプレックスや優越コンプレックスの状態では、
その感情が自分を守るための防衛反応になってしまいます。
- 劣等コンプレックスでは、「どうせ無理だ」と行動を止めてしまう。
- 優越コンプレックスでは、「自分は特別だ」と他人との関係を断ってしまう。
どちらも「前に進む」「協力する」という建設的なエネルギーを失わせるのです。
「非建設的な感情」とは何か
非建設的な感情とは、人生をより良くする方向に働かない感情のこと。
怒り、嫉妬、無力感、自己否定……。
これらは人間として自然な感情ではありますが、それが長く続くと心を閉ざしてしまいます。
アドラー心理学では、感情そのものを「悪」とは考えません。
むしろ、その感情がどの方向に働いているのかを重視します。
- 自分や他人を傷つけてしまう感情 → 非建設的
- 自分や他人を成長させる感情 → 建設的
劣等・優越のどちらに偏っても、自分の視野が狭くなり、
「人生をよくしよう」という方向性が見えなくなってしまうのです。
「建設的な感情」に変えるための第一歩
アドラー心理学では、非建設的な感情を乗り越える鍵として、
**“他者とのつながり”**を強調します。
つまり、自分の感情を「誰かのため」「社会のため」に生かす視点を持つこと。
たとえば——
- 劣等感を感じたら、「この経験を誰かの支えに変えよう」と考える。
- 優越感が出てきたら、「誰と協力すれば、もっと良い成果になるか」を考える。
こうした小さな意識の転換が、感情を“非建設的”から“建設的”に変える力になります。
劣等にも優越にも偏らない「ちょうどよさ」を育てる
人生を健やかに生きるには、
「自分を卑下しすぎず」「他人より優れようともしすぎない」
——この中間点を保つことが大切です。
アドラー心理学で言う**“共同体感覚”**とは、まさにそのバランスのこと。
自分の価値を認めながら、同時に他者の価値も尊重できる。
その感覚を育てることで、心の中に「建設的な感情」が育っていきます。
まとめ:非建設的な感情は、気づいた瞬間から変えられる
劣等コンプレックスも優越コンプレックスも、
実はどちらも「心が守りに入っている状態」です。
その防衛の裏には、「本当はもっとよく生きたい」「成長したい」という願いがあります。
だからこそ、非建設的な感情を否定するのではなく、
「これは今の私に必要なサインだ」と受け止めることが大切です。
アドラー心理学が教えるのは、
感情はあなたを止めるためにあるのではなく、気づかせるためにある。
その気づきをきっかけに、
あなたの感情は、もう一度“建設的な方向”へ動き出すのです。
