痛み止めを嫌いすぎる人・脱力できない人の共通点|リハビリをスムーズに進めるためのコツ
痛み止めを嫌いすぎる人・脱力できない人の共通点
リハビリをスムーズに進めるためのコツ
前回の記事では「痛みとうまく付き合えない人」についてお話ししました。
今回はその延長として、痛み止めをむやみに嫌う人、そして脱力ができない人に焦点を当てていきます。
どちらのタイプにも共通しているのは、「痛みをコントロールする」という視点の欠如です。
リハビリでは、痛みを“敵”ではなく“調整すべき信号”として捉えることが大切です。
痛み止めをむやみに嫌わない——リハビリを進める“潤滑油”として
リハビリには痛みがつきものですが、痛みが少ないほど動きはスムーズに、リハビリ効果も高くなります。
にもかかわらず、「薬は嫌い」「痛み止めを飲むと治りが遅くなる」といった理由で、処方された鎮痛薬を避ける人が少なくありません。
もちろん、副作用リスクがある患者では慎重に使う必要があります。
しかし、「薬を飲む=悪いこと」ではありません。
痛みが強いままリハビリをすると、どうしても身体に余分な力が入り、
- 可動域が広がらない
- 動作がぎこちない
- 痛みに対する恐怖が強まる
といった悪循環に陥ります。
痛み止めは、そうした悪循環を断ち切るための“橋渡し”のような存在です。
「痛みを和らげて動かせる状態をつくる」ことこそが、回復を早める近道なのです。
したがって、痛みがリハビリの妨げになっていると感じたときは、我慢せずに医師に相談し、適切なタイミングと量で鎮痛薬を活用することをおすすめします。
脱力ができない人——痛みと緊張の悪循環
痛みを抱える患者の多くに見られるのが、脱力(リラックス)ができないという問題です。
たとえば、肩関節の腱板修復術後の初期リハビリでは、「他動可動域訓練」が中心になります。
これは、自分の筋力を使わず、療法士や重力・反対側の腕を使って関節を動かす訓練です。
ところが、この段階で力を抜けない患者は、
- 痛みへの恐怖から筋肉がギュッと緊張する
- 関節が動かない
- 無理に動かそうとしてさらに痛みが強まる
という悪循環に陥ります。
現場の療法士たちは口をそろえて言います。
「ある日“脱力のコツ”を掴んだ患者さんは、一気に可動域が広がることが多い」と。
つまり、脱力とは単なる“力を抜く動作”ではなく、リハビリをスムーズに進める鍵なのです。
「力を抜く」ではなく「100%預ける」——脳の特性を利用した脱力法
脱力が難しいのは、人間の脳の仕組みにも関係しています。
脳は“否定語”を理解できないという特性を持っています。
たとえば、
「今から酸っぱいレモンを想像しないでください。」
と言われると、多くの人がレモンの酸っぱさを想像して唾液が出てしまいます。
つまり、「しないで」と言われても、脳は「想像する」という行為を実行してしまうのです。
これをリハビリに置き換えると、「力を抜いてください」という指示は、
脳にとって「力を入れる」イメージを想起させてしまう可能性がある、ということになります。
そこで有効なのが、**「〇〇に100%預ける・任せる」**という言葉の使い方です。
たとえば、
- 療法士が腕を支えて挙上する訓練では、「腕の重さを100%療法士に預ける」
- 自分の反対の腕を使う場合は、「その腕に100%任せる」
- 振り子運動では、「重力に100%身体を委ねる」
この“100%預ける”というイメージを持つことで、脳は「脱力した状態」を自然に作り出すことができます。
もし療法士が支えを離したら腕がストンと落ちるくらい——それが理想的な脱力です。
リハビリを進めるうえでの「痛みと脱力」の黄金バランス
痛みが強すぎると力が入り、脱力できない。
脱力できないと関節が動かず、さらに痛みが強まる。
この悪循環を断ち切るためには、適切な鎮痛薬の使用と、意識的な脱力の練習が欠かせません。
痛みを「我慢するもの」ではなく、「コントロールするもの」と捉え、
動かすための環境を整えることが、リハビリ成功の土台になります。
まとめ:リハビリは「痛みを減らし、力を抜く」ことから始まる
- 痛み止めを必要以上に避けない
- 脱力のコツは「100%預ける」イメージを持つ
- 痛みをコントロールしてこそ、スムーズな回復が得られる
リハビリは「痛みと緊張」との戦いではなく、「痛みを理解し、力を手放す」プロセスです。
身体も心もリラックスした状態でこそ、本当の意味での回復が始まります。
