政治・経済

『自民敗北が導く政治の正常化と選挙制度改革の行方』

taka

逆説的な政治の正常化

高市内閣の発足以降、国会では驚くほどまともな「議論」が行われるようになった。もちろん、トップに立つ人物の資質によるところも大きいだろう。しかし、それ以上に決定的な要因は、自民党の議席数が大幅に減少したことにあるといえる。

かつての「一強多弱」と呼ばれた時代、数の力による強引な国会運営が目立ったが、拮抗した勢力図においては、真剣な議論なしに物事は進まない。皮肉なことだが、昨年の総裁選で石破茂氏が選出され、その後の選挙で自民党が歴史的な敗北を喫したことが、結果として今の「議論できる国会」を生み出したのである。

もし、最初から順当な政権運営がなされていたら、これほどの急激な変化は訪れなかったに違いない。日本政治をまともな方向へ変えたのは、逆説的ではあるが、あの混乱と敗北をもたらした選択であった。まさに「人間万事塞翁が馬」。災い転じて福となす、歴史の妙といえる現象が目の前で起きているのだ。

小選挙区制という「罪」

いま、超党派の議員連盟によって「中選挙区制」への回帰が議論され始めている。これは極めて健全な流れである。そもそも、長きにわたり日本の政治から活発な議論を奪ってきた元凶こそが、現在の「小選挙区制」であったからだ。

小選挙区制は、1つの選挙区から1人しか当選しない「勝者総取り」の仕組みである。この制度下では、党の公認を得られるかどうかが政治生命を左右するため、党執行部、とりわけ幹事長の権力が肥大化する。結果、党内での異論は封殺され、執行部に追従するだけの議員が増産されてしまった。

かつて財務省の問題や重要な政策について、党内でまともな議論が起きなかったのも、この制度が議員の自律性を奪っていたからに他ならない。「自民党の長期政権」と「小選挙区制」の組み合わせは、多様な意見を戦わせるという民主主義の根幹を、静かに、しかし確実に蝕んでいたのである。

多党化時代に求められる制度

現在のように野党が多党化し、有権者の価値観が多様化した時代において、死票が多くなる小選挙区制はもはや限界を迎えている。そこで浮上するのが、かつての中選挙区制である。

中選挙区制であれば、1つの選挙区から3人から5人が当選するため、同じ選挙区から自民党の候補者が複数立候補することも可能となる。党の方針と異なる意見を持つ議員が、無所属で出馬しても当選する道が残されるのだ。これは、党中央の顔色を伺う「ヒラメ議員」ではなく、国民の方を向いて議論できる政治家を育てる土壌となる。

小選挙区制の導入は、二大政党制による政権交代可能な政治を目指したものであったが、日本の政治風土においては、議論の喪失という副作用の方が大きかったといわざるを得ない。過ちを認め、制度を元に戻すこと。それこそが、失われた政治への信頼と、真の国益に資する議論を取り戻すための最短ルートとなるだろう。

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TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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