政治・経済

『国家予算の矛盾・補正予算に隠された未来へのリスク』

taka

巨額予算の裏側にある「歪み」

2025年度補正予算が成立に向かっています。その規模は、18兆3000億円余り。新型コロナ禍以降で最大規模となるこの数字だけを見れば、政府が経済対策に本腰を入れているかのように映るかもしれません。物価高対策に8.9兆円が投じられることは、生活の安全保障という意味で評価できる部分もあるでしょう。

しかし、この予算の中身を詳細に紐解いていくと、国家としての戦略における重大な欠陥、あるいは「歪み」とも言える構造的問題が浮き彫りになってくるのです。それは、本来であれば数十年単位で取り組むべき国家の根幹に関わる事業が、単年度の「補正予算」として計上されているという事実です。

「長期」の事業を「短期」で賄う矛盾

具体的に見てみましょう。経済安全保障の強化に1.55兆円、食料安全保障に6000億円強、さらには造船業の再生や創薬支援、重要鉱物の安定供給確保。これらはすべて、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。造船も、新薬開発も、あるいは海底資源の開発も、10年、20年という長いスパンで技術と設備を維持し、育てていくべき分野です。

にもかかわらず、これらが「補正予算」という、言わば「臨時のお小遣い」のような枠組みで手当てされている。ここに、日本経済が抱える深刻な病巣があると言わざるを得ません。なぜなら、企業が巨額の設備投資や人材育成に踏み切るために最も必要なものは、政府による「長期的なコミットメント」だからです。

企業の投資意欲を削ぐ構造

企業経営者の視点に立って考えてみてください。造船や創薬といった分野は、企業の供給能力そのものを復活させる事業です。政府が直接船を作るわけではなく、民間企業がリスクを負って投資を行わなければなりません。

しかし、予算が「補正」であれば、企業はどう思うでしょうか。「今年は予算がついたが、来年、政権が変われば打ち切られるかもしれない」という疑念を抱くのは当然のことです。実際、政治情勢の変化によって方針が覆るリスクがある以上、企業は本気でアクセルを踏むことができません。「長期で需要が拡大する」という確実な予見性がなければ、供給能力の回復、すなわち産業の復活は絵に描いた餅に終わるでしょう。

諸悪の根源「PB黒字化目標」の呪縛

では、なぜこのような不合理な予算編成が行われるのでしょうか。その元凶こそが、「プライマリーバランス(PB)黒字化目標」です。政府が単年度の収支均衡に固執するあまり、本来の財布である「通常予算」を増やすことができず、必要な長期投資を「補正予算」という抜け道に押し込まざるを得なくなっているのです。

たとえ積極財政派の内閣が存在したとしても、このPB目標という足枷がある限り、通常予算での長期計画は組めません。結果として、毎年秋になるとドタバタと補正予算を組むという、極めて非効率で不安定な財政運営が繰り返されることになります。これは国家百年の計を放棄しているに等しい行為と言えるでしょう。

真の「国力」を取り戻すために

いま必要なことは、小手先の予算編成ではありません。企業が安心して未来に投資できるよう、「長期の予算は通常予算に計上する」という当たり前の原則を取り戻すことです。そのためには、自民党政権自身が閣議決定したPB黒字化目標を、自らの手で破棄する英断が求められます。

骨太の方針でPB目標を破棄し、2027年度以降の通常予算を正常化させる。それこそが、日本の供給能力を回復させ、真の意味で国民の生命と財産を守る「安全保障」への第一歩となるのです。数字の辻褄合わせではなく、国家の未来を見据えた財政への転換が、今まさに待ったなしで求められていると言えるでしょう。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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