政治・経済

『PB黒字化目標の転換が意味するもの』

taka

単年度主義から数年単位へ

高市総理大臣は、11月7日の衆議院予算委員会で、プライマリーバランス(PB)目標の運用方針を「単年度ごとの達成確認」から「数年単位でのバランス確認」に見直すと表明した。
この発言は、一見すると小さな変更のように見えるが、実は日本の財政運営の根幹に関わる大きな転換点といえる。

長期の「緊縮線」に縛られた財政運営

これまでの日本では、「○○年度にPB黒字化を達成する」という明確な年度目標が設定され、その年に向けて赤字縮小の「線」が引かれてきた。
たとえば、第二次安倍政権下では「2018年度に黒字化」を目指し、達成が難しくなると「2020年度」、さらにコロナ禍を経て「2025年度」へと修正されていった。
こうした長期の黒字化計画は、実質的に財務省主導の「緊縮財政ロードマップ」と化していたといえる。
目標年度に向けた単年度ごとの赤字縮小が求められ、そのための増税や歳出削減が当たり前のように行われてきたのである。

金利上昇と「黒字化堅持論」

現在、日銀の金融政策正常化に伴い、金利は上昇傾向にある。
この状況を受け、緊縮派からは「金利が上がる今こそPB黒字化を達成すべき」との声が上がっている。
しかし、政府債務対GDP比率が上昇する主因は金利だけではない。名目GDPの伸び、つまり「分母」の変化も大きく影響する。
現状、GDPデフレーターがプラス化し、名目GDPは拡大傾向にある。したがって、債務比率は自然に改善していく構造にあるといえる。

「単年度主義」と「長期緊縮」の矛盾

興味深いのは、財務省が「我が国の予算は単年度主義」として長期的な投資計画には慎重な一方で、PB黒字化のような長期緊縮目標は当然のように推進してきた点である。
この二重構造こそが、日本の経済成長を抑え込む一因であった。
今回、単年度の達成評価を廃止することで、PB目標は事実上「緊縮計画」としての実効性を失う可能性がある。

財政再生への新しい一歩

もちろん、最終的には「PB目標の破棄」が望ましいとの意見もある。
しかし、今回の見直しは、その第一歩といえるだろう。
国民が理解すべきは、「PB黒字化目標」がむしろ債務比率上昇の原因であり、日本の成長力を削いできたという事実である。
財政健全化の名のもとに続けられてきた緊縮政策を見直し、真に国民の豊かさを支える財政運営へと舵を切る時期が来ている。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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