成功に近道はない?「個性主義」の罠とコヴィーが説く「正しい地図」の重要性
「聞き流すだけで英語が話せる」 「1日5分の作業で月収100万」 「相手を意のままに操る心理テクニック」
書店やネットには、こうした「楽して、手っ取り早く結果が出る」とうたうノウハウがあふれています。あなたもついつい、こうした情報に心惹かれてしまったことはありませんか?
しかし、これらをいくら試しても、一時的な効果しかなかったり、すぐに虚しくなったりするのはなぜでしょうか。
この記事では、『7つの習慣』の著者コヴィー博士が警鐘を鳴らす**「個性主義(テクニック偏重)」の罠**について解説します。 理学療法士の視点でも断言できますが、「運動も食事制限もせずに痩せて筋肉がつく」なんて方法は存在しません。あるとしたら、それは体を壊す劇薬です。
結論をお伝えします。テクニックで近道をしようとするのは、間違った地図を持って全力疾走するようなもの。まずは「正しい地図」を持つことから始めなければなりません。
現代病としての「個性主義(テクニック至上主義)」
コヴィー博士は、現代社会にはびこる風潮をこう批判しています。
「今の社会には個性主義が蔓延している。(中略)人間の成長に求められる努力という自然のプロセスを踏まなくとも、個人の効果性、豊かで深い人間関係を手に入れ、充実した人生を手っ取り早く得られると示唆しているからだ」
これを**「個性主義」**と呼びます。 これは、人格や信頼といった土台(根っこ)を無視して、話し方や見せ方といった表面的なテクニック(枝葉)だけで成功しようとする考え方です。
それは「絵空事」であり詐欺に近い
「しかしそれは絵空事である。『働かなくとも簡単に金持ちになれますよ』と、そそのかしているようなものだ」
冷静に考えればわかりますが、種を蒔いて、水をやり、雑草を抜くというプロセス(努力)を飛ばして、秋の収穫だけを得ることは不可能です。これを「農場の法則」と言います。
しかし、人間関係やビジネスになると、私たちはつい「魔法の杖」や「裏技」を探してしまいます。コヴィー博士は、それは自分を欺く行為(まやかし)だと断じています。
間違った地図で全力疾走しても意味がない
ここで、本書の中で最も有名で、かつ核心を突く比喩が登場します。
「個性主義のテクニックや応急処置的な手法で成功を手に入れようとするのは、デトロイトの地図でシカゴのどこかを目指すのと大差ない」
想像してみてください。あなたは今、アメリカの都市「シカゴ」に行きたいとします。 しかし、手渡された地図が、印刷ミスで「デトロイト(全く別の都市)」の地図だったらどうなるでしょうか?
- 行動力がある人ほど悲惨 「よし、頑張るぞ!」と気合を入れて、その地図を頼りにスピードを出せば出すほど、本来の目的地(シカゴ)からは猛スピードで遠ざかってしまいます。
- テクニックを磨いても無駄 「運転技術(スキル)」を磨いても、「ポジティブ思考(態度)」で運転しても、地図が間違っている以上、永遠に目的地には着けません。
まずは「地図(パラダイム)」を確認せよ
人生において「努力しているのに報われない」と感じる時、問題なのはあなたの「能力」や「努力不足」ではありません。 あなたが持っている**「地図(前提となる考え方)」が間違っている可能性**が高いのです。
- 「相手を操ろう」という地図(テクニック)
- 「自分さえ良ければいい」という地図(利己心)
この「デトロイトの地図」を持っている限り、どんなに応急処置的な手法(絆創膏)を貼っても、人間関係の悩みや仕事の行き詰まりは解決しません。
まずは立ち止まり、正しい地図(誠実、貢献、信頼などの原則)に持ち替えること。それが遠回りのようでいて、唯一の確実な道なのです。
まとめ・アクションプラン
今回の記事のポイントは以下の3点です。
- 「楽してすぐに成功できる」という個性主義(テクニック)は、まやかしである。
- 成長のプロセス(努力)を飛ばして結果だけを得ることは、自然の法則に反する。
- 地図(方向性)が間違っていたら、どんなに努力しても目的地には着かない。
「タイパ(効率)」を求めるあまり、人生の大事なプロセスまで省略しようとしていないか、一度胸に手を当てて考えてみましょう。
Next Action:小手先のテクニック本を捨てる
もし本棚に「楽して儲かる」「一瞬で人を操る」といったタイトルの本があるなら、それを読む時間をやめてみましょう。 そして、代わりに時代を超えて読み継がれる「正しい地図」が書かれた本、**『7つの習慣』**を開いてみてください。
そこには、裏技は一つも載っていません。しかし、あなたがシカゴ(人生の成功)に確実にたどり着くための正確なルートが記されています。
