哲学者とは生き死にの職人──エピクテトスに学ぶ「生きる技術」としての哲学

哲学は「生きるための技術」

エピクテトスは『語録』の中で次のように語っています。

「哲学を学んでも、自分の外部にあるものを得られる保証はない。それは哲学の範疇を超えている。木材が大工にとっての材料であり、銅が彫刻家にとっての材料であるように、私たち自身の生活が、生きる技を身につけるための材料なのである」

この言葉が示すのは、哲学が単なる知識や理論ではなく、私たちの「生き方そのもの」を形づくる技術であるということです。人生そのものが素材であり、哲学はそれを彫り上げる道具なのです。

哲学は娯楽ではない

「哲学」というと、学者や知識人の高尚な趣味だと思う人もいるでしょう。しかしエピクテトスは、哲学は人間が生きる上で欠かせない営みだと説きました。

19世紀アメリカの思想家、ヘンリー・デイビッド・ソローも同じ考えを持っていました。彼は「哲学の目的は、人生の諸問題を理論的にではなく実際的に解く手助けをすることにある」と述べています。つまり、哲学とは現実に役立つものであり、抽象的な遊びではないのです。

死を学ぶことは生を学ぶこと

ローマの哲学者キケロは「哲学をするとは死に方を学ぶことなり」と述べました。死を直視することは恐ろしいことのように思えますが、ストア派の哲人たちにとって、それはむしろ人生を正しく生きるための核心でした。

死を意識することで、私たちは時間を浪費せず、本当に大切なものを優先できます。哲学は死を恐れるのではなく、死を前提としてどう生きるかを教えてくれるのです。

人生を彫刻するという比喩

エピクテトスの言葉を受けて、哲学を「彫刻」に例えることができます。私たちはみな、ひとつの命とひとつの死しか持ちません。その限られた素材をどう彫り上げるかが人生です。

ミケランジェロが「私は大理石に埋め込まれた天使を解放するまで彫り続ける」と語ったように、私たちも一つひとつの経験を彫刻刀で削りながら、本来の自分を形作っていきます。哲学はその道具であり、私たちを導く光なのです。

現代に活かす3つの実践

1. 知識ではなく行動に移す：学んだ言葉や思想を、日常の選択や態度に反映させる。
2. 「死」を意識して生きる：メメント・モリの精神を持ち、先送りせずに大切なことに取り組む。
3. 人生を作品と考える：自分の行動や習慣を「彫刻する」つもりで整えていく。

まとめ

哲学は学問や趣味の領域にとどまるものではなく、人生そのものを形づくる「生きる技術」です。エピクテトスが言うように、私たち自身の生活がその材料であり、哲学はその素材を彫り上げる道具なのです。

生きることと死ぬこと、この二つの難しい仕事をできるだけうまくやるために、哲学を職人の道具として活かしてみましょう。そうすれば、私たちの人生もまた、一つの美しい作品へと仕上がっていくのではないでしょうか。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。