足底腱膜炎は「炎症」ではない
名称に「-itis(炎症)」が含まれるものの、足底腱膜炎の本質は炎症性疾患ではなく変性性疾患です。
実際に組織学的検査では、典型的な炎症細胞浸潤は確認されず、代わりに以下の所見が報告されています。
- 肉芽組織の形成
- 微小断裂(micro-tears)
- コラーゲン線維の乱れ(disarray)
- 血管機能不全(dysfunctional vasculature)
これらは炎症というよりも、慢性的な微小外傷の蓄積による変性プロセスを反映しています。
画像検査での特徴
- 超音波検査
- 足底腱膜の肥厚
- 不均一性(heterogeneity)
- 石灰化や内部断裂
- MRI所見
- 慢性的な腱膜炎像
- 古い腱膜断裂例の報告も存在
これらの所見は、単なる炎症では説明できない構造的な破綻と退行性変化を示しています。
発症メカニズム
- 立位・歩行・荷重動作の繰り返し
→ 足底腱膜に慢性的ストレスが加わる - 微小断裂の発生
→ 自然修復が追いつかず、肉芽組織と線維の乱れが進行 - 慢性変性
→ 腱膜が硬化・肥厚し、血流障害も加わる - 症状出現
→ 活動時痛から進行すると安静時や夜間痛へ
臨床への示唆
- 足底腱膜炎は「炎症抑制」よりも「組織の修復促進・負荷軽減」を重視すべき疾患である。
- 超音波評価は病態把握に有効であり、腱膜肥厚や断裂の確認が診断に寄与する。
- 治療戦略は、炎症性疾患とは異なり、ストレッチ・荷重管理・筋膜リリース・物理療法・体外衝撃波治療など「変性組織へのアプローチ」が中心となる。
まとめ
- 足底腱膜炎の本質は炎症ではなく変性
- 組織学的には微小断裂・コラーゲン変性・血管障害が主体
- 超音波やMRIで肥厚・石灰化・断裂が確認可能
- 臨床では「炎症抑制」よりも「変性組織の修復と負荷管理」が重要