圧倒的多数の代償:予算と消費税ゼロの裏側
圧倒的多数の裏で進む、異例の国会運営
先の衆議院選挙において、与党は圧倒的な議席を獲得した。これにより、参議院での否決を覆す再可決も可能となり、事実上、政権はフリーハンドを得たといえる。しかし、その強大な「数の力」が、早くも危うい形で国会運営に表れ始めている。 現在、過去最大となる122兆円超の新年度予算案が審議を控えている。本来であれば、充実した審議が求められるはずだが、与党は審議開始前から「3月13日の衆院通過」という採決日程を提案した。中身の議論よりも、まずは「いつ決めるか」という結論を急ぐ姿勢は、異例といわざるを得ない。
予算審議の遅れは誰の責任か
なぜ、このような強行的なスケジュールが浮上したのか。与党側は「審議時間を短縮してでも年度内成立を目指す」と主張している。しかし、そもそも予算審議が遅れている根本的な原因は、首相自身の判断による唐突な衆議院解散にある。 物価高対策が最優先と掲げながら、自らの求心力を高めるために解散を断行し、結果として国会日程を圧迫したのである。それにもかかわらず、年度内成立が困難な状況を「野党が審議を阻んでいるため」と印象付けるかのような言動が見受けられる。自らが招いた遅れの責任を、巧みに他者へ転嫁しようとする姿勢には疑問が残る。
「消費税ゼロ」公約に潜む責任転嫁の罠
こうした責任転嫁の構造は、目玉公約である「食料品の消費税ゼロ」にも見え隠れしている。圧倒的な議席を持ち、国民の信を問うたはずの首相が、ここに来て「野党の協力が得られたら実施する」と発言しているのだ。 政策の実現に向けて「国民会議」という枠組みを設けたものの、そこから反対意見を持つ政党を排除する動きすらある。圧倒的な権力を持ちながら、あえて実施の条件に「野党の協力」を掲げるのは、公約が実現できなかった際の「保険」ではないだろうか。最初から実現する意志が乏しく、失敗の責任を野党に押し付けるための予防線であると捉えられても不思議ではない。
巧妙化する強権政治への警鐘
一連の動きから見えてくるのは、数の力で政策を強行しつつ、都合の悪い結果は野党の責任にすり替えるという、極めて巧妙かつ強権的な政治姿勢である。 物価高に苦しむ国民生活の改善よりも、政権の思惑や責任逃れが優先されている現状。私たちは、その言葉の裏にある真意を冷静に見極める必要がある。熱狂に流されることなく、事実に基づいた厳しい視点を持ち続けることが、今まさに求められているのではないだろうか。
