政治・経済

『人口減少は絶望ではない。生産年齢人口と経済成長の真実』

taka

統計上の定義と世間の誤解

「生産年齢人口」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。統計上、15歳から64歳までの人口を指す言葉である。いわゆる現役世代と定義されているが、これはあくまで線を引くための便宜上の区分に過ぎない。現代においては、65歳を超えても社会の第一線で活躍する人々は数多く存在する。

しかし、世間ではある一種の信仰が根強い。「働き手である生産年齢人口が増えれば経済は成長し、減れば衰退する」という人口ボーナス論である。確かに、人口が増加すれば労働力という物理的な量は増える。だが、それだけで経済の未来が決まると考えるのは、あまりにも単純化された悲観論といわざるを得ない。経済の構造は、もっと複合的でダイナミックなものである。

経済成長を決定づける3つの要素

ここで、経済の基礎体力ともいえる「潜在成長率」について整理しておきたい。この成長率を決定づける要素は、資本投入量、労働投入量、そして全要素生産性の3つである。生産年齢人口の増減が直接影響するのは、このうちの「労働投入量」のみである。

冷静に考えてみてほしい。たとえ労働者の数が劇的に増えたとしても、企業が設備投資を行わず、技術革新も起きなければどうなるか。現場のやる気や効率が停滞していれば、財やサービスの生産量は落ち込み、GDPはマイナス成長となるだろう。 逆に、労働投入量が減少したとしても、残りの2つ、すなわち資本投入量と全要素生産性が向上すれば、経済は力強く成長する。資本投入とは、工場や機械、システムへの投資であり、生産性とは、より少ない労力で大きな価値を生み出す力のことである。つまり、労働者の頭数が減っても、一人ひとりが生み出す価値を高めれば、国全体としての豊かさは維持、あるいは向上させることができるのである。

人手不足こそが進化の源泉

歴史を振り返れば、日本の高度経済成長期を支えたのは、単なる人口増加だけではなかった。それ以上に寄与したのは、劇的な生産性の向上である。当時のような「高圧経済」の下では、常に需要が供給を上回り、人手不足が発生していた。 実は、この「人手不足」こそが、企業を本気にさせる重要なトリガーとなる。

労働力が豊富で余っている状態では、企業はコストをかけてまで機械化や効率化を進めようとはしない。安い労働力に頼る方が楽だからである。しかし、人が足りないとなれば話は変わる。企業は生き残りをかけ、省力化投資や技術開発に資金を投じるようになる。 現在、日本は少子高齢化により生産年齢人口の比率が低下している。これを嘆く声は多いが、経済学的な視点で見れば、これは絶好の投資機会の到来を意味している。

成熟社会への転換点と未来

図を見れば明らかなように、総人口の減少ペースに比べ、生産年齢人口の減少ペースは速い。これは確かに人手不足を招く。しかし、その不足分を埋めるために行われる投資こそが、イノベーションを生み出す源泉となるのである。 AIの活用、ロボット技術の導入、業務プロセスの抜本的な見直し。これらはすべて、人が足りないからこそ加速する。futuristic smart city conceptの画像

Getty Images

少子高齢化による生産年齢人口比率の低下は、日本にとって「終わりの始まり」ではない。むしろ、労働集約型の経済から、知識・技術集約型の高付加価値経済へと脱皮するための、またとないチャンスをもたらしているといえる。 安易な悲観論に流されず、この変化を「進化への圧力」と捉え直す視点が必要である。人口減少社会における成長とは、数の拡大ではなく、質の深化にあるのだから。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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