プライマリーバランス神話が日本を貧しくした理由
プライマリーバランス黒字化という誤解
政府支出が税収を上回れば、プライマリーバランスは赤字となる。この状態を「借金が増える」として問題視する報道が続いてきた。しかし、国債とは政府と日銀の間で行われる通貨発行の仕組みであり、民間銀行を経由して発行された額は最終的に日銀当座預金として戻ってくる。国全体のバランスシートは悪化せず、財政破綻も起こらない。むしろ、デフレ下でプライマリーバランスを黒字化することこそ、経済をいびつにし貧困を深刻化させる。
政府黒字は民間赤字を意味する
プライマリーバランス黒字とは、政府が民間の貯蓄を吸い上げている状態である。誰かの貯金は他者の借金という関係にある以上、政府が黒字になれば民間は赤字になる。特にデフレ下では、政府が黒字化を目指すほど需要が減り、供給過剰が悪化し、デフレはさらに深まる。国民の所得は削られ、消費は縮小し、貧困が加速する。
適切なインフレは財政を改善する
仮に政府が20兆円の国債を発行し、インフレ率が3%になれば、お金の価値が低下するため負債の実質額は減少する。1,000兆円の債務残高であれば、約30兆円の負債が実質的に消え、差し引きで財政は改善する。多くの国はこの原理に基づいて経済運営をしてきた。物価が上がり、賃金が2倍、3倍と伸びる局面では、政府債務の比重は自然と軽くなる。日本もかつては同じ道を歩んでいた。
財政破綻論がもたらした深刻な代償
しかし、「借金1,000兆円」という言葉に国民が怯え、「もし金利が上がったら…」という実現しない仮定が一人歩きした結果、政府は公共投資を削減し、小泉改革以降は徹底した緊縮財政に舵を切った。これにより需要は急速に縮小し、日本は深刻なデフレに陥った。政府が支出を抑える中で国民は倹約し、労働者は不安定雇用へと追いやられ、消費はさらに冷え込む。
20年続いた緊縮の結末
アベノミクス期も「政府支出が増えた」と誤解されがちだが、実際の伸び率はゼロに近い超緊縮である。菅政権ではコロナ対応で一時的に支出が増えたが、方向性はむしろ緊縮強化だった。その結果、日本の20年間の成長率はわずか18%。世界平均の139%と比べれば圧倒的に低く、ドル換算ではマイナス20%。一人当たりGDPは韓国を下回り、世界における日本のGDPシェアも17.3%から5.9%へと急落した。緊縮財政がもたらした結末は、国民の貧困化と国力の衰退である。
