『社会保険料という“逆累進課税”の罠』
非正規公務員の急増が示すもの
2023年度、日本の非正規公務員は前回調査から約7%増加した。財源の削減を迫られた地方自治体が、正規職員を減らし、非正規に切り替えることで対応している。
その結果、行政サービスの質が低下しているのが実情である。
非正規公務員の給与水準は低く、年収250万円以上の者はわずか2割。半数近くが150万円未満にとどまる。雇い止めの不安を抱えながら働く環境では、結婚や子育てを望む余裕など生まれにくい。
公共サービスの劣化は国民の損失
行政サービスの質が下がれば、最終的に不利益を被るのは国民自身である。
「公務員を減らせ」「給与を下げろ」といった声は一見もっともらしく聞こえるが、結果として自らの生活基盤を脅かすことになる。
国の基盤を支える公務員を削れば、教育、医療、災害対応など、あらゆる分野に遅れが生じる。政府が本気で実質賃金の引き上げや少子化対策を進めるなら、まずは非正規公務員を正規雇用化し、公務員数を拡充すべきである。
財政支出を恐れず、国を立て直す
そのための財源確保は難しくない。地方交付税交付金を安定的に増やせばよいだけの話である。
農業への所得補償、国土計画の復活、公務員給与の適正化なども、国家として不可欠な投資といえる。緊縮財政の継続こそが、社会の衰退を加速させる。
社会保険料は“隠れた増税”
今、低所得層を最も苦しめているのは、所得税ではなく社会保険料である。
東京都の場合、標準報酬18万円の労働者は、厚生年金と健康保険で約2万5千円を納める。実に所得の14%以上が社会保険料に消える。
一方で、高所得者には上限が設定されており、月収がどれほど高くても社会保険料は最大で約14万円。負担率で見れば極めて低い。
つまり、低所得者ほど重い負担を強いられる「逆累進課税」構造になっているのである。
必要なのは“引き上げ”ではなく“引き下げ”
ここで求められるのは、高所得者へのさらなる負担ではない。
むしろ、社会保険料そのものを引き下げ、低所得層の可処分所得を増やすことが重要である。社会保険料の軽減は、高所得層には大きな影響を与えないが、生活に余裕のない層にとっては決定的な支援になる。
この「逆累進」の構造を是正しない限り、真の所得格差是正も、少子化対策も前に進まないといえる。
