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「時間が解決してくれる」と思っていませんか?リハビリが遅れる人の典型的な考え方と対策

taka

「時間が解決してくれる」と思っていませんか?

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リハビリが遅れる人の典型的な考え方と対策

リハビリがうまくいかない人の中でも、特に注意が必要なのが「時間が経てば自然に治る」と思ってしまうタイプです。
この考え方は、一見ポジティブに見えて実は非常に危険です。

整形外科領域では、手術や外傷の後に「リハビリを怠る」ことで、可動域制限・筋力低下・関節拘縮といった二次的な問題が生じることが少なくありません。
本稿では、「時間が解決してくれる」と思ってしまう患者の心理と、それを防ぐための臨床的アプローチについて解説します。


「時間が治す」と思っている人ほど治りが遅い理由

以前の記事で紹介した“リハビリを舐めていたAさん”も、このタイプでした。
こうした患者は、リハビリを積極的に行わなくても、時間の経過とともに自然に良くなると思い込んでいます。

特に整形外科手術後の患者に多く見られ、

  • 「まだ痛いから無理しない方がいい」
  • 「骨が完全にくっついてから動かそう」
  • 「もう少し安静にしておけば自然に良くなる」
    といった理由で、リハビリへの取り組みを先延ばしにしてしまいます。

手術は「早期に動かすための準備」でもある

この「待つ姿勢」が危険なのは、手術そのものが早期リハビリを想定して設計されている点にあります。

たとえば、肩の骨折(鎖骨や上腕骨近位端など)に対する手術は、骨がくっつく前でもリハビリを安全に始められるように固定性を確保することを目的の一つとしています。
つまり、痛みがあっても動かす段階に入っていることが多いのです。

早期に関節を動かすことで、以下のようなメリットがあります。

  • 筋力低下を防ぐ
  • 関節拘縮を防止する
  • 神経・感覚系の再学習を促す

逆に、「骨が完全にくっついてから」「痛みがなくなってから」とリハビリを後回しにすると、

  • 筋萎縮の進行
  • 可動域制限
  • 痛みに対する過敏化
    などの悪循環に陥ります。

結果的に、「時間が経つほど治りが悪くなる」という本末転倒な状態に陥ってしまうのです。


「まだ痛い」=動かしてはいけないではない

「痛いから動かせない」と言う患者は多いですが、痛み=禁止サインではないことを理解してもらう必要があります。
むしろ、痛みがある段階での軽度運動こそが、痛みの慢性化を防ぐ場合もあります。

臨床家は、痛みの程度や部位を確認しながら、

  • 「この痛みは“使ってよい痛み”です」
  • 「この動きは安全な範囲です」
    といった具体的な言葉で許可を与えることが大切です。

患者は「大丈夫」と言われるだけで、安心して動けるようになります。
この“安心感の提供”こそが、リハビリ初期介入の鍵になります。


医師と「時間的な目標」を共有する

患者が不安や痛みでリハビリをためらうとき、目標の共有がモチベーションを支えます。
たとえば医師や療法士が、

「次の外来までに肩が120度くらい上がるようにしていきましょう。」
といった期間目標を設定すると、患者は目的を持ってリハビリに取り組みやすくなります。

ここで大切なのは、達成の成否ではなく、過程への意識づけです。
期限があることで、「時間が解決するのを待つ」姿勢から、「時間を使って努力する」姿勢へと意識が変化します。

無理をして急に頑張るのではなく、小さな積み重ねを継続することがリハビリ成功のカギです。


まとめ:時間は「味方」にも「敵」にもなる

リハビリにおいて、「時間」は決して中立ではありません。
適切なリハビリを継続していれば、時間は回復を後押しします。
しかし、リハビリを怠ったまま時間だけが過ぎれば、筋萎縮や関節拘縮が進み、回復の妨げになるのです。

臨床家としては、患者が「時間が解決してくれる」という誤解を持たないよう、

  • 手術の目的(早期運動のための安定化)
  • 痛みと動作の関係性
  • 具体的な回復スケジュール
    を丁寧に伝えていくことが重要です。

リハビリは「待つもの」ではなく、「積み上げるもの」。
時間を味方につけるか、敵に回すかは、日々の一歩にかかっています。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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