間違った思考を追い出す|エピクテトスと現代医学が示す「心を整える」重要性
心の「膿」を取り除くという考え方
デール・カーネギーの『道は開ける』には、
古代ローマの哲学者 エピクテトス のこんな言葉が紹介されています。
「膿を体から出すことよりも、
間違った思考を心から追い出すことに意識を向けるべきだ。」
一見すると比喩的ですが、
実はこの言葉には、現代の医学や心理学にも通じる深い真理が含まれています。
身体にたまった毒素を排出しないと病気になるように、
心の中の“誤った思考”を放置すると、
メンタルや体の健康まで蝕まれていくのです。
エピクテトスの教え:思考が現実をつくる
エピクテトスはストア派哲学の代表的な思想家であり、
「外の出来事ではなく、それをどう考えるかが人生を決める」と説きました。
つまり、怒り・嫉妬・不安・自己否定といった感情も、
外部の刺激ではなく、自分の思考の結果だというのです。
だからこそ彼は、
「間違った思考を追い出すことこそ、人間にとって最優先の課題だ」
と断言しました。
現代医学も認める「思考と病の関係」
エピクテトスがこの真理を語ってから1900年後——
現代医学も彼の考えを裏づけています。
アメリカ・ジョンズ・ホプキンズ大学病院の
キャンビー・ロビンソン医師 はこう述べています。
「5人の入院患者のうち、4人は精神的ストレスによる症状で苦しんでいる。」
これは驚くべき数字です。
つまり、入院患者の8割が“心の問題”を抱えているということ。
しかもロビンソン医師は、
「器質的(身体的)な病気であっても、
その多くに精神的ストレスが関係している」と指摘しています。
その根本的な原因は、
「人生の諸問題にうまく適応できていないこと」
——まさに、エピクテトスが説いた“誤った思考”なのです。
思考の歪みが心身に与える影響
ネガティブな思考は、単に気分を落とすだけではありません。
長期間続くと、実際に体の健康を害します。
●「怒り」
血圧上昇・心拍数増加を引き起こし、
慢性的に続けば心疾患のリスクを高めます。
●「不安・恐怖」
ストレスホルモン(コルチゾール)が増加し、
免疫力低下・胃腸トラブル・不眠を招きます。
●「自己否定・罪悪感」
脳内の報酬系が抑制され、
やる気の低下・うつ状態を引き起こす原因になります。
つまり、**間違った思考は「心の膿」であり、
放置すれば体まで蝕む“目に見えない病原菌”**なのです。
心の膿を出す3つの方法
① 思考を“紙に書き出す”
不安や怒りをノートに書くことで、
感情を客観的に見ることができます。
書き出した瞬間、頭の中の混乱が整理され、思考が軽くなります。
② 「これは自分でコントロールできるか?」を問う
ストア哲学の核心です。
他人の言動や過去の出来事は変えられません。
自分の「反応」だけに意識を向けることで、心が安定します。
③ 毎日「感謝」を意識する
感謝の思考は、脳に“安心”を与え、
ストレスホルモンを減少させることが分かっています。
一日3つ、感謝できることを思い出してみましょう。
「間違った思考」を追い出すことは、自己防衛である
エピクテトスは、
「心の管理は自分の最大の責任である」と考えました。
人生の出来事を変えることは難しくても、
どう捉えるかは自分で選べる。
怒りや不安を手放すのは“甘さ”ではなく、
心と体を守るための“知恵”です。
ロビンソン医師の言葉を借りるなら、
病気の多くは「人生への不適応」から生まれる。
その不適応を生むのは、
現実ではなく、現実の解釈=思考なのです。
まとめ:心を整えることが、最高の治療
- 間違った思考は“心の膿”として心身を蝕む
- ストレスの多くは「人生への思考的な不適応」から生まれる
- 思考を正せば、心が軽くなり、体も健康になる
- エピクテトスの哲学は、現代医学でも通用する真理である
デール・カーネギーは、
エピクテトスの教えをこう解釈しています。
「私たちは、心配や怒りではなく、
建設的な思考で人生を満たすべきだ。」
今日からできることはただ一つ。
間違った思考を追い出し、
代わりに「感謝」「希望」「前向きな視点」を招き入れること。
それが、心と体を健康にする最もシンプルで確実な方法です。
