「小さな店なら安心」は大間違い。簡易課税も標的になる日
「うちは関係ない」という致命的な油断
「食料品の消費税をゼロにすると、飲食店は仕入税額控除ができなくなり、実質的な増税で潰れてしまう」。 前回、この衝撃的な事実をお話しした。これを聞いて、こう胸をなでおろした経営者もいるのではないだろうか。 「うちは売上が5000万円以下の小さな店だから関係ない。面倒な計算が不要な『簡易課税制度』を使っているから、影響は受けないはずだ」と。 しかし、断言させていただく。その認識はあまりに甘く、危険だ。食料品の税率がゼロになれば、この「簡易課税」という安全地帯も、確実に焼き払われることになるだろう。
簡易課税という「聖域」の仕組み
そもそも簡易課税制度とは、事務負担を減らすために用意された特例措置だ。実際の仕入れにかかった税額を計算する代わりに、「売上の一定割合を経費(仕入れ)とみなして、その分を控除していいですよ」という、非常に大雑把でありがたいドンブリ勘定のシステムである。 現在、飲食店の場合は「みなし仕入率」として60%が認められている。つまり、実際にいくらで食材を仕入れようが、相手がインボイス登録していようがいまいが、無条件で売上の6割を仕入れとみなして、納税額から引くことができるのだ。
財務省が許さない「不公平」
問題はここからだ。もし食料品の消費税がゼロになったらどうなるか。 原則通りの計算をする大きな飲食店(原則課税事業者)は、仕入れにかかる税額控除が消滅し、強烈な増税の痛みを負うことになる。その一方で、簡易課税の店だけが、今まで通り「6割控除」の恩恵を受け続けるとしたらどうだろう。 「大きな店は増税で苦しんでいるのに、小さな店だけが得をする」。そんな不公平を、財務省という役所が許すはずがない。整合性を取るために彼らが何をするか、答えは明白だ。簡易課税の計算に使う「みなし仕入率」を、強制的に引き下げるのである。
全ての飲食店に逃げ場はない
「飲食店のみなさん、仕入れに税金がかからなくなったのだから、経費とみなす割合も減らしますね」。 そんなもっともらしい理屈で、これまで60%だった控除率は、50%、あるいは40%へと削られることになるだろう。そうなれば、簡易課税を選んでいる事業者も、間違いなく増税となる。 「簡易課税だから大丈夫」という安心感は、砂上の楼閣に過ぎない。食料品の消費税ゼロ。この政策は、規模の大小を問わず、すべての飲食店に対する「無差別な増税宣告」であると、今のうちに覚悟しておいた方がいいといえる。
