自己啓発

「感情も貯金せよ」――新渡戸稲造『自警録』に学ぶ、心をすり減らさない生き方

taka
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「何の必要もないことに感情的になるのは愚かだ」

新渡戸稲造は『自警録』で、こう切り出します。

善悪はともかく、損得勘定という現実的な観点から考えても、何の必要もないことに感情的になるのは、愚かなことだ。

この一文は、現代のストレス社会に生きる私たちへの痛烈なメッセージです。
ちょっとした言葉に腹を立て、ニュースやSNSの投稿にいら立ち、
無意味な議論で時間と心を消耗してしまう――。

新渡戸は、そんな“感情の浪費”こそが人生を貧しくする原因だと見抜いていました。


「感情にも貯金がある」――新渡戸の比喩の妙

新渡戸は続けます。

以前から私は「精神力の貯蓄」という言葉を旗印にして、精神の力も大切に育んでいくことの重要性を論じてきた。
それに劣らず重要なのが、つまらない、どうでもいいことにはできるだけ感情的にならないようにする「感情の貯蓄」ということだ。

彼が用いた「貯蓄」という比喩は、非常に現代的です。
お金を浪費すれば生活が苦しくなるように、
感情を浪費すれば、心が疲弊していく。

小さなことに怒り、嫉妬し、落ち込むたびに、
心のエネルギーは少しずつ減っていきます。
そして本当に力を発揮すべき場面で、
冷静さも勇気も残っていない――そんな状態に陥るのです。

新渡戸はそれを防ぐために、
「感情の節約」ならぬ**“感情の貯蓄”**を説いたのです。


「感情を殺す」のではなく、「使いどころを選ぶ」

新渡戸は誤解を避けるように、こう補足しています。

もちろん、これは人間の重要な感情まで殺せという意味ではなく、感情を入れる必要のないことにまで感情的になるなということなのだ。

ここに、彼のバランス感覚が光ります。
感情を持たない冷たい人間になることを勧めているのではありません。
むしろ、感情の価値を理解しているからこそ、
**「感情を大切な場面のために取っておく」**ことを提案しているのです。

たとえば――

  • 家族や友人のために本気で怒る
  • 大切な目標に対して情熱を燃やす
  • 誰かの悲しみに心を寄せる

そうした感情は、人間らしさの証です。
問題は、どうでもいいことで感情を使いすぎてしまうこと。
そこを見極める力が「心の成熟」なのです。


「感情の貯蓄」を妨げる3つの浪費癖

では、私たちはどんなときに無駄に感情を使ってしまうのでしょうか。
新渡戸の考えを現代的に置き換えると、次の3つが代表的です。

① SNSの反応に一喜一憂する

「いいねが少ない」「あの人は無視した」――
他人の反応に心を振り回されると、感情のエネルギーはあっという間に枯渇します。

② 自分の正しさを証明しようとする

議論で勝つために感情を燃やす人がいますが、
多くの場合、それは時間と心の浪費です。
相手を変えるより、自分を整える方がずっと実りがあります。

③ 他人の小さな欠点に腹を立てる

「礼儀がなっていない」「言い方が気に障る」――
そうした些細なことに反応するたび、感情の残高は減っていきます。
気にしないことは、決して鈍感ではなく“賢さ”です。


「感情の貯蓄」が生む3つのメリット

感情の使いどころを選べるようになると、人生の質が大きく変わります。

  1. 冷静さを保てる
     無駄な怒りや不安が減るため、判断が的確になります。
  2. 心の余裕が生まれる
     小さなトラブルに動じず、人に優しくなれます。
  3. 本当に大切なことに集中できる
     仕事、家族、夢――注ぐべき場所にエネルギーを注げるようになります。

新渡戸が言う「感情の貯蓄」とは、
このように心のリソースを戦略的に使う知恵なのです。


「精神の貯蓄」と「感情の貯蓄」――二つの柱

新渡戸は「精神力の貯蓄」と「感情の貯蓄」を並べて語ります。

精神力とは、理性や意志の力。
感情の貯蓄とは、心のエネルギー管理。

この二つをバランスよく保つことで、
人は長い人生を安定して歩むことができます。

まるで銀行の預金残高のように、
精神と感情のバランスを日々チェックすることが、
心の健康を守る第一歩なのです。


現代へのメッセージ――「心のエネルギー」を守れ

新渡戸が生きた明治時代には、SNSもニュース速報もありませんでした。
それでも彼は、**「人間は感情に振り回されやすい生き物だ」**と見抜いていたのです。

そして今、私たちは彼の時代よりもはるかに多くの情報にさらされ、
日々、小さな感情の刺激に疲れ果てています。

だからこそ、この言葉が心に響きます。

「感情を無駄遣いするな。
それを貯めておけば、真に必要なときに力となる。」


まとめ:「感情の節約」ではなく、「感情の貯蓄」を

新渡戸稲造の「感情の貯蓄をせよ」という教えは、
感情を抑えることではなく、心を賢く使う術を示しています。

  • どうでもいいことには感情を使わない
  • 本当に大切なときにこそ心を燃やす
  • 感情の管理は、人生の質の管理である

感情はお金と同じ。
使い方次第で、人生を豊かにも、貧しくもする。

新渡戸稲造の静かな言葉は、今も私たちに語りかけます。

「怒りも悲しみも、使うときに使えば力となる。
だが、浪費すれば、心はすぐに貧しくなる。」

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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